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資料・調査報告

声明・意見書

再犯の防止等の推進に関する法律案の一部修正を求める声明

2016年11月24日
NPO法人監獄人権センター
代表 海渡雄一

1 法案の概要と経緯
衆議院法務委員会において、11月16日自民党、民新党、公明党、日本維新の会の与野党の議員提案による「再犯の防止等の推進に関する法律案」が衆議院法務委員会で委員長提案され、11月17日,衆議院本会議において,与野党の議員提出による「再犯の防止等の推進に関する法律案」(以下「本法案」という。)が全会一致にて可決され,参議院に送付された。
その提案理由としては、政府において、再犯防止に関する基本的な法律を制定することの必要性が強く認識され、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するため、再犯の防止等に関する施策を、国を挙げて推進するための法律を制定する必要があると考えられ、提案されたとされている。
法案は、第一に、この法律は、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、国民が犯罪による被害を受けることを防止して、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与することを目的とすることとし、犯罪をした者等及び再犯の防止等について定義を設け、基本理念、国等の責務などについて定めている。
第二に、再犯の防止等に関する施策の推進の仕組みとして、政府が再犯防止推進計画を定め、省庁横断的に施策を行うこととするとともに、地方公共団体においても地方再犯防止推進計画を定めるべき努力義務の規定を設けている。
第三に、国民の間に広く再犯の防止等についての関心と理解を深めるため、7月を再犯防止啓発月間とし、その趣旨にふさわしい事業を実施するとしている。
第四に、再犯防止推進計画で定めることとされている項目に対応して、再犯の防止等に向けた教育及び職業訓練の充実、犯罪をした者等の社会における職業及び住居の確保等、再犯の防止等に関する施策の推進のための人的及び物的基盤の整備並びに再犯の防止等に関する施策の推進に関するその他の重要事項の四つの分野について、国が各種施策を行うべきことを定めるとともに、地方公共団体にも地方の実情に合わせて施策を行うべき努力義務の規定を設けている。
このように、この法案は、国の刑事司法を通じて再犯の防止を図るという重要な目的を担うべき法案であり、同法案の制定に努力された与野党の国会議員の努力には心から敬意を表するものである。しかし、議員立法の形式で提案されたために、法制審議会の審議はもちろん、政府によるパブリックコメントなども経ておらず、罪を犯した者の社会復帰に関わる弁護士会やNGOの意見が聞かれた経緯もない。法案において取り扱われている課題の重要性に鑑みるとき、より慎重な立法手続きが求められるものと考え、以下のとおり、誤った解釈や運用を招くことのないよう一部を修正のうえ、成立を求めるものである。

2 刑罰制度の根本的な目的について
まず第1に指摘しなければならないことは、法案の目的が混乱していることである。
再犯を防止していくことが望ましいことは私たちにも全く異存はない。しかし、この法案は、第1条の法の目的について、「国民が犯罪被害を受けることを防止する」「安心安全な社会の実現に寄与する」ことだけを目的とし、「円滑な社会復帰」はそのための手段として位置づけられている。しかし、このような定め方で良いかには、根本的な疑問がある。
我々は、刑罰制度は、犯罪への応報であることにとどまらず、罪を犯した人を人間として尊重することを基本とし、その人間性の回復と、自由な社会への社会復帰を目的とするものでなければならないと考える。 刑罰の目的そのものが犯罪をした者の人間性の回復と社会復帰を目的とすることを明らかにするため、「犯罪をした者の人間性の回復と円滑な社会復帰を促進すること」そのものを、手段ではなく法の目的として定めるよう法案を修正しなければならない。
例えば、法案第1条は次のように改めるべきである。
「この法律は、再犯の防止によって、犯罪の発生を減少させることが、国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与することに鑑み、国民の理解と協力を得つつ、再犯の防止等に関する施策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって犯罪をした者等の人間性の尊重と円滑な社会復帰を促進することを目的とする。」
この点は、再犯防止対策の原則に関わることであり、法立案者においても、異論のないところと考えられるので、是非とも法案を修正していただきたい。

3 犯罪をした者等の定義をめぐって
第2に、犯罪をした者等の定義があまりにも不明確であり、指導と支援の区別があいまいであることが問題である。
本法案第2条第1項の定める「犯罪をした者等」の定義が不明確であり,本法案第3条第2項は,犯罪をした者等に対して,拘置所や少年鑑別所等未決拘禁段階の施設に収容されている間のみならず,社会に復帰した後も途切れることなく必要な指導と支援を受けられるようにすることを定めている。この「指導」の趣旨は,仮釈放された者等に対して保護観察を通じて指導することと解されるが,未決の者や刑を終えた者を対象として「指導」を行うこともできるように読める。
また,本法案第21条の「指導」についても,「矯正施設における処遇を経ないで,(略)社会内において指導」を受ける対象者は保護観察付執行猶予者を,「一定期間の矯正施設における処遇に引き続き,社会内で指導」を受ける対象者は仮釈放された者を意味するものと考えられるが,家裁送致前の少年や起訴猶予処分を受けた者や満期出所者にも一定の法的な指導がなされるように解釈できる。
しかし、未決の者に対する「指導」は明らかに無罪推定を受ける地位と矛盾する。
刑事被収容者処遇法31条は、「未決被拘禁者の処遇に当たっては、未決の者としての地位を考慮し、その逃走及び罪証の隠滅の防止並びにその防御権の尊重に特に留意しなければならない」と定めており、「未決の者としての地位」が無罪推定を受ける地位であることは、当時の法務省立案担当者の書かれた注釈書(※1)にも明記されている 。そして、このことは国連被拘禁者保護原則36条1項にも明記されている。
また、刑を終えた者等に対する「指導」は満期出所者まで社会内で監視を行う制度につながりかねない。従来の実務においても、刑期を終えた者に対する「指導」が観念されたことない。むしろすべての出所者に仮釈放の機会を保障し、一定の期間法的に指導し、完全な刑の終了を迎えるようにすべきことが提唱されていたが、これは刑を終えた者に対する指導はあり得ないという法的理解が共有されていたからにほかならない。
戦前においては、刑を終えた者についても、予防拘禁を継続できる制度が存在し、深刻な人権侵害を引き起こしていた。
本法案の立案者がそのようなことを意図したとは考えがたいが、無用な誤解を生まないよう、未決の者と家裁送致前の少年、刑を終えた者等に対しては「指導」は行わず「支援」にとどめるように法案を明確に修正すべきである。

4 本人の自覚は環境整備から生まれる
第3に、法案3条3項は、犯罪をした者の責任の自覚、被害者への理解、自ら社会復帰のために努力することが定められている。そのこと自体に異論はなく、3条1項で、職業に就くこと、住居を確保することができないことなどによって、円滑な社会復帰をすることが困難であることは正しく指摘されている。しかし、環境の整備が重要であり、そのような施策の充実によって本人の自覚、理解も進むと考えられる。
この3条の3項は1項は統一的に読まれるべきであり、このことを法案の趣旨として質疑を通じて、明確にしておく必要があると思われる。

5 幅広い民間団体との協力を確認して欲しい
第4に、5条2項で民間団体との連携協力、3項で情報提供が規定されているが、この民間団体に入り口支援・出口支援に積極的に取り組んできた弁護士会や民間において社会復帰に取り組む官民の幅広い市民の取り組みが含まれるべきである。
とりわけ、元受刑者らも関わる社会復帰支援団体については、矯正施設によっては、受刑者との外部交通を制限するような動きも見られた。しかし、真に社会復帰を支援する動きが元受刑者を含めて取り組まれることは、諸外国においても決して珍しいことではない。
以上の点を、法案の審議において明らかにしていただきたい。

6 本法案については一部修正の上で成立を求める
最後に、同法案の制定に努力された与野党の国会議員の努力に感謝するとともに、この法案が国の再犯防止にかかわる基本的な制度を定める重要な法律案であることから、罪を犯した者の社会復帰に関わる専門家を招致した参考人質疑など十分な時間をかけた審議を行い、上記の二点については、誤解のないように修正されるように求める。
また、政府に対しても、これまでにもまして、罪を犯した者の社会復帰そのものを重要な政策目的に明確に位置づけ、そのための大胆な財政措置が講じられることを願って、以上のとおり声明する。

※1 林真琴ほか「逐条解説刑事収容施設法」93ページ



金田法務大臣による死刑執行に抗議する

2016年11月11日
NPO法人監獄人権センター

金田勝年法務大臣は,本日(11月11日)田尻賢一氏(福岡拘置所)に対し,死刑を執行した。今回の執行は,本年8月に就任した金田法務大臣による初の執行である。

我々は,昨年6月25日の上川法務大臣、12月18日の岩城法務大臣(いずれも当時)による死刑執行に対し,「裁判員裁判による死刑判決の確定が進む中,上訴の取り下げにより裁判員裁判での死刑判決が確定した人々に対する死刑執行は,もはや避けられない。政府は,裁判員制度と世論の支持を根拠に死刑制度維持の責任を市民に押し付けることはやめ,ただちに,義務的上訴制度を早期に導入するとともに、死刑制度全体の見直しを開始すべきである。」と述べた。この言葉を,再再度ここに繰り返す。

田尻氏は,2011年10月の熊本地裁,2012年4月の福岡高裁・控訴審の死刑判決後,弁護人による上告を自ら取り下げた。田尻氏による上告取下げは,死刑判決に対する自動上訴制度の導入の必要性を改めて強く認識させるものである。わが国には死刑判決に対する自動上訴制がないため,多くの死刑判決が,上訴審における審理を経ることなく確定してきた。しかし,死刑判決の誤りは,無実の人を死刑とする場合に限られない。責任能力に疑問がある場合や,共犯者間の役割等にとどまらず,死刑か無期かの判断が分かれる要素は様々であり,その判断を誤る可能性は常にある。2013年以来,3件の裁判員裁判による死刑判決が東京高等裁判所によって破棄され,その判断が最高裁判所によって維持された例は,このことを如実に示している。それゆえに,国連の国際人権(自由権)規約委員会(2008年第5回審査総括所見パラ17),拷問禁止委員会(2007年第1回審査総括所見パラ20,2013年第2回審査総括所見パラ15)は,繰り返し,日本政府に対し,死刑判決に対する義務的上訴制度の導入を勧告してきた。

本年10月7日,日本弁護士連合会が「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,メディア,一般市民のあいだで死刑存廃についての議論が開始された。日本政府は,死刑制度をめぐる上記を含めた数々の問題点を直視し,制度の廃止をも視野にいれ,直ちに死刑制度自体の見直しを行うべきである。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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渋谷警察署での署員19名の結核集団感染に関して徹底調査と再発防止を求める声明

2016年5月9日
NPO法人監獄人権センター

1.結核集団感染事件の発生
東京都渋谷区の警視庁渋谷警察署において,2016年4月12日,署員19人が結核に感染し,うち6人が発症していたことが判明した。
報道によれば,同署の留置施設において,2015年1月22日に逮捕され勾留されていた男性(60代)が,同年2月11日に倒れているのが見つかり,病院へ搬送されたが死亡が確認され,解剖の結果,同年8月に,死因が肺結核であることが判明したという。その後,同年12月になって,上記男性の留置の担当であった署員(20代)が体調を崩して入院し,結核と診断されたことから感染が判明した。留置係や刑事課の署員約60人に検査を行ったところ,ほかに18人が感染しており,計19人中6人が発症し,3人が入院したとのことである。
また,死亡した上記男性の解剖をした東京大学医学部は,2016年4月15日,男の死因が肺結核と判明したのに保健所への届出が半年ほど遅れたことについて謝罪した。東大医学部によると,感染症と診断した場合,感染症法に基づいて保健所へ届け出なければならないが,担当医は「解剖の場合は警察への報告だけでいい」と勘違いしていたという。

2.留置施設における医療体制の欠如
留置施設は,本来,逮捕から勾留決定がなされるまでの比較的短い期間,被疑者を留置するための施設であって,裁判官による勾留決定後は刑事施設(拘置所)において勾留するのが原則である。しかし,実際には,刑事施設に代えて,留置施設において勾留する取扱いが常態的になされており,こうした「代用監獄」(現在の法令では「代用刑事施設」)制度は,古くから違法な取調べの温床として国内外において厳しい批判に晒されてきたところである。
ここでの問題は,留置施設は,比較的短期間の収容を本来の目的とする施設であるために,医療体制が整っていない点にある。留置施設には,非常勤も含めて医師その他の医療専門職員は配置されておらず,したがって,拘置所であれば必ず実施される入所時の健康診断も行われない(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律61条1項,同法200条1項参照)。死亡男性が代用監獄ではなく拘置所に移送されていれば,入所時の健康診断において結核が発見されていた可能性が高い。
もっとも,留置施設では,被留置者に対して,おおむね1カ月につき2回,留置業務管理者が委嘱する外部の医師による健康診断を行うこととされている(同法200条2項)。ただし,留置施設には医療設備が存在せず,もちろん胸部エックス線検査を行うことはできない。死亡した男性は,2015年1月22日から2月11日までの21日間に渡り,当該留置施設において留置されていたのであり,法令にしたがった運用を前提とすれば,少なくとも1回は健康診断を受けていたはずである。しかし,公表されている事実経過からは,健康診断においては進行した結核の症状が見落とされていたと考えられ,これは,留置施設における健康診断のあり方に深刻な疑念を抱かせる事実である。

3.死因究明手続の欠如の問題
さらに,男性の死因を究明手続と,その結果を受けての調査や感染拡大防止措置が迅速かつ適切になされていれば,早期に死因が結核と判明し,その後の感染拡大を防げたことは論を俟たない。
刑事被収容者処遇法は,刑事施設の被収容者が死亡した場合,その死体に関する措置を定めており(177条1項,2項),これを受けて刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則93条は,検視の結果,変死又は変死の疑いがあると認めるときは,検察官及び警察官たる司法警察員に対し,その旨を通報しなければならないと定める。これに対し,被留置者が死亡した場合については,同法239条及びこれを受けた内閣府令(国家公安委員会関係刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律施行規則)のいずれも,検死に関する規定を欠いている。
もっとも,本件では男性の死因を明らかにするため解剖がなされたが,報道によれば,2015年2月に死亡した上記男性について,死因が明らかになったのは死亡から約半年後のことであった。この時点で,解剖にあたった医師は,保健所への届け出は怠っていたものの,警察には死因を伝えていたという。刑事被収容者処遇法は,留置業務管理者に対し,感染症の発生及びまん延を防止するための措置を義務付けている(204条,64条)のであるから,医師による届け出義務懈怠の有無にかかわらず,渋谷警察署の留置業務管理者は,死因の連絡を受けた時点で,ただちに留置業務従事者をはじめとして死亡男性と接触した可能性のあるすべての人物について,必要な措置をとる義務があった。にもかかわらず,同年12月に署員が結核と判明するまで何らの措置を取らなかったことは明らかな法令違反であり,この義務懈怠がさらなる感染を惹き起こした可能性は十分に考えられる。

4.再発防止に向けて
今般,渋谷警察署で生じた事態は,留置施設における保健衛生・医療に関する体制が,極めて不十分であることを明らかにすると同時に,今後も,全国の警察留置場で同様の事態が生じ得る構造的な問題点を示している。
本年5月,刑事被収容者処遇法は施行から満10年を迎える。今回の事態を受け,警察庁は,当面する課題として,留置施設における健康診断をはじめとする保健衛生・医療体制につき,法の規定を含めて抜本的な見直しを行うべきである。
あわせて,本件は,代用監獄(代用刑事施設)そのものが,人の生命をも危険に晒しかねない危険な制度であることを改めて明らかにした。当センターは,同制度の廃止に向けて,具体的な検討が開始されるよう,強く求めるものである。

以上



熊本地震に関する声明

法務大臣 岩城光英 殿
法務省矯正局長 小川新二 殿

2016年4月16日
NPO法人監獄人権センター

2016年4月14日午後9時26分ころ熊本地震が発生し,以後,現在にいたるまで大きな地震が相次いで発生しています。被災され,今なお被害の拡大に直面されている方々の困難に思いを致すとともに,亡くなられた方々への深い哀悼の意を表します。

被害の詳細は明らかでありませんが,被災地域には熊本刑務所をはじめとする刑事施設もあります。刑事施設においては,過去の震災事例等にまなび日頃より災害への備えがなされているものとは推測しますが,自由を奪われ情報にも自由に接することのできない被拘禁者の方々の不安,さらに,みずからも被災しながら収容されている方々の処遇にあたる施設職員の皆さまの負担は,非常に大きなものであろうと考えます。

関係当局におかれましては、被災地域の刑事施設における電気、水、食料等と正確な情報の提供,および施設関係者の安全の確保について、特段の配慮をされるよう,強く要望いたします。

以上



岩城法務大臣による死刑執行に抗議する

2016年3月25日
NPO法人監獄人権センター

岩城光英法務大臣は,本日(3月25日)鎌田安利氏(大阪拘置所)および吉田純子氏(福岡拘置所)に対し,死刑を執行した。今回の執行は,昨年10月に就任した岩城法務大臣による,昨年12月に続く二度目の執行である。

鎌田氏は,75歳と高齢であり,人権団体が昨年実施したアンケートに対し「ボケがすすんでむつかしい事が分りません」と回答している。鎌田氏に対する執行は,「高齢者の執行に関し,より人道的なアプローチをとることを考慮すべきである」とした国連自由権規約委員会による勧告(2008年)に照らしても,問題があると言わざるを得ない。

吉田氏は,死刑判決確定後,再審請求を行っていたものの,昨年棄却されていたと伝えられている。再審請求棄却後,更なる再審請求が行われるまでの期間を狙った死刑執行である可能性が高い。2014年における国連自由権規約委員会の勧告をはじめ,死刑確定者およびその家族に対し,事前に予定されている死刑の執行日時を伝えるべきことは,繰り返し国連諸機関から求められてきたが,日本政府は一顧だにしない状況が続いている。

2020年,日本は国連の第14回犯罪防止刑事司法会議(コングレス)の開催国となる。日本政府が,死刑制度とその運用に対する国際社会からの勧告をことごとく無視し,死刑の執行に固執し続けることは,わが国の汚点を世界に晒すことにほかならない。今こそ日本政府は,死刑制度をめぐる上記を含めた数々の問題点を直視し,制度の廃止を視野にいれ,直ちに死刑制度自体の見直しを行うべきである。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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岩城法務大臣による死刑執行に抗議する

2015年12月18日
NPO法人監獄人権センター

岩城光英法務大臣は,本日(12月18日)津田寿美年氏(東京拘置所)および若林一行氏(仙台拘置支所)に対し,死刑を執行した。今回の執行は,本年10月に就任した岩城法務大臣による初の執行である。

我々は,本年6月25日の上川法務大臣(当時)による死刑執行に対し,「裁判員裁判による死刑判決の確定が進む中,上訴の取り下げにより裁判員裁判での死刑判決が確定した人々に対する死刑執行は,もはや避けられない。政府は,裁判員制度と世論の支持を根拠に死刑制度維持の責任を市民に押し付けることはやめ,ただちに,義務的上訴制度を早期に導入するとともに、死刑制度全体の見直しを開始すべきである。」と述べた。この言葉を,再度ここに繰り返す。

津田氏は,2011年6月の死刑判決後,弁護人による控訴を自ら取り下げた。津田氏の責任能力に関しては,起訴前に検察庁が簡易鑑定を含めて2度の精神鑑定を行い,起訴後も裁判所による精神鑑定が行われていた。津田氏による控訴取下げは,死刑判決に対する上訴取下げの無効性について基準を示した平成7年6月28日最高裁第二小法廷決定(1)に照らしても疑問の余地があるものであったが,その効力が検証されることはないまま本日の執行に至った。この点において,今回の控訴の取下げは,死刑判決に対する自動上訴制度の導入の必要性を改めて強く認識させるものである。わが国には死刑判決に対する自動上訴制がないため,多くの死刑判決が,上訴審における審理を経ることなく確定してきた。しかし,死刑判決の誤りは,無実の人を死刑とする場合に限られない。責任能力に疑問がある場合や,共犯者間の役割など,死刑か無期かの判断が分かれる要素は様々であり,その判断を誤る可能性は常にある。一昨年以来,3件の裁判員裁判による死刑判決が東京高等裁判所によって破棄され,その判断が最高裁判所によって維持された例は,このことを如実に示している。それゆえに,国連の条約機関は,繰り返し,日本政府に対し,死刑判決に対する義務的上訴制度の導入を勧告してきた 。(2)

また若林氏は,控訴審から否認に転じ犯人性を争っていたが,第一審においては公訴事実を争わず,事件発生から僅か9か月後には判決に至っていた。そのため,被告人の否認主張を踏まえての徹底した事実審理は行われていないまま,死刑が確定している。わが国では,死刑事件においてすら罪責認定と量刑判断のための手続が分離されていないため,同一手続のなかで事実関係を争いつつ減刑を求めることを強いられる事案が生じる。量刑裁量の広い刑法の規定のあり方を含めて,死刑という究極の刑罰を科す手続としては不適切である。

日本政府は,死刑制度をめぐる上記を含めた数々の問題点を直視し,制度の廃止をも視野にいれ,直ちに死刑制度自体の見直しを行うべきである。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

(1)「死刑判決に対する上訴取下げは、上訴による不服申立ての道を自ら閉ざして死刑判決を確定させるという重大な法律効果を伴うものであるから、死刑判決の言渡しを受けた被告人が、その判決に不服があるのに、死刑判決宣告の衝撃及び公判審理の重圧に伴う精神的苦痛によって拘禁反応等の精神障害を生じ、その影響下において、その苦痛から逃れることを目的として上訴を取り下げた場合には、その上訴取下げは無効と解するのが相当である。けだし、被告人の上訴取下げが有効であるためには、被告人において上訴取下げの意義を理解し、自己の権利を守る能力を有することが必要であると解すべきところ(最高裁昭和二九年(し)第四一号同年七月三〇日第二小法廷決定・刑集八巻七号一二三一頁参照)、右のような状況の下で上訴を取り下げた場合、被告人は、自己の権利を守る能力を著しく制限されていたものというべきだからである。」

(2)国際人権(自由権)規約委員会(2008年第5回審査総括所見パラ17),拷問禁止委員会(2007年第1回審査総括所見パラ20,2013年第2回審査総括所見パラ15)。

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上川法務大臣による死刑執行に抗議する

2015年6月25日
NPO法人監獄人権センター

上川陽子法務大臣は,本日(6月25日),神田司氏(名古屋拘置所)に対し,死刑を執行した。

今回の執行は,上川法務大臣による初の執行である。その対象とされた神田氏は,2009年3月の死刑判決後,自ら控訴を取り下げたが,その後,当該控訴取下げは真意に基づかない無効なものであるとして,私選弁護人を選任し,取下げの効力を争っていた。

わが国には,死刑判決に対する自動上訴制度がない。このため,多くの死刑判決が,上訴審における審理を経ることなく,確定してきた。しかし,死刑判決の誤りは,無実の人を死刑とする場合に限られない。一昨年以来,3件の裁判員裁判による死刑判決が東京高等裁判所によって破棄され,その判断が最高裁判所によって維持された例は,このことを如実に示している。たとえ死刑を刑罰として存置している場合であっても,死刑の適用は極めて例外的な事案に限定されなければというのが,国際人権基準の要求である。それゆえに,国連の条約機関は,繰り返し,日本政府に対し,死刑判決に対する義務的上訴制度の導入を勧告してきた。すなわち自由権規約委員会は上訴審における再審査を義務的とする制度の導入を勧告し(2008年第5回審査総括所見パラ17),拷問禁止委員会も同様の勧告を繰り返している(2007年第1回審査総括所見パラ20,2013年第2回審査総括所見パラ15)。

日本政府は,こうした勧告に対し,義務的上訴制度導入の必要性はないとして,ことごとく拒否してきた。しかし,裁判員裁判による死刑判決の確定が進む中,上訴の取り下げにより裁判員裁判での死刑判決が確定した人々に対する死刑執行は,もはや避けられない。政府は,裁判員制度と世論の支持を根拠に死刑制度維持の責任を市民に押し付けることはやめ,ただちに,義務的上訴制度を早期に導入するとともに、死刑制度全体の見直しを開始すべきである。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

2014年8月29日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は,本日(8月29日),小林光弘氏(仙台拘置支所,56歳),高見沢勤氏(東京拘置所,59歳)に対し,死刑を執行した。今回の執行は,2014年に入ってからは2回目,第二次安倍政権において,谷垣法務大臣の命令により執行された人の数は11名に達した。

小林氏は,消費者金融支店に放火し5人を殺害したとして青森地方裁判所で死刑判決を受け,2007年3月27日,上告棄却により死刑判決が確定した。小林氏は第一審から殺意を争い,確定後も三度にわたり再審請求を行っていた。本年8月6日に第3次再審請求が棄却され,弁護人が第4次再審請求の準備をしていたさなかの執行であった。

高見沢氏は,配下の暴力団組員らと共謀し合計3名を殺害したとして前橋地方裁判所で死刑判決を受け,2012年10月23日,上告棄却により死刑判決が確定した。高見沢氏は,被害者3名のうち2名については殺害の共謀を否認し,また1名については正当防衛ないし誤想防衛を主張し,いずれの殺人についても無罪を主張していた。

去る7月24日,国連の規約人権委員会は,第6回日本政府報告書審査の総括所見において,死刑の廃止を十分に考慮すること,死刑確定者とその家族に対し予定されている死刑執行の日を予め合理的な余裕をもって告知することなどを,日本政府に勧告していた。仮に,本日の執行予定が2名の死刑確定者に告知されていれば,彼らは間違いなく,再審請求をはじめとする適法な手続に訴えていたであろう。しかし谷垣法務大臣は,勧告をまったく顧慮することなく,しかも,9月3日に予定されている内閣改造による退任間際に,敢えて2名の執行を命じたのである。そこには,人の生命に対する尊重はもちろんのこと,死刑に直面する人に対する手続的保障という観念も看取できない。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

2014年6月26日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は,本日(6月26日),川崎政則氏(大阪拘置所,68歳)に対し,死刑を執行した。今回の執行は,2014年に入ってからは初めての執行であるが,第二次安倍政権において,谷垣法務大臣の命令により執行された人の数は9名に達した。

川崎氏は,自己の亡き妻の実姉である女性(当時58歳)と,女性の2人の幼い孫を殺害した事実により死刑を宣告され,2012年7月12日,上告棄却により死刑判決が確定した。弁護人は,川崎氏は知的障害・広汎性発達障害のために行動を制御することが著しく困難であったとして,限定責任能力を主張したが,裁判所は,精神鑑定の結果に基づき,完全責任能力を認めた。最高裁判所も上告棄却判決において,被告人の「知能程度がやや低い」ことを認めているが,これが刑事責任に与えた影響は否定している。

川崎氏の障害の詳細については不明であるものの,国際基準においては,知的障害者に対する死刑が禁じられている。たとえば,国連経済社会理事会の「死刑に直面する者の権利の保護の保障の履行に関する決議」(ESC/RES/1989/64)は,精神遅滞ないし知的能力が著しく限定された人に対する死刑を行わないよう求めている。しかし,我が国では,有責性が類型的に低いと考えられる知的障害者への死刑の適用について,責任能力に関する一般的な基準以外にはなんらの指針も存在しないままである。無実の罪により死刑を科されることが許されないのは論を待たない。しかし,こうした指針の不存在は,本年3月に釈放された袴田巌氏のように明らかな冤罪事例以外であっても,誤った死刑の適用が避けがたいことを示している。

来る7月15日及び16日,国連の規約人権委員会は,第6回目となる日本政府報告書審査を実施する。本日の執行が,日本における死刑の実施状況に関し,委員会による新たな懸念を惹き起こすことは必至である。監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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矯正医療の在り方に関する有識者検討会報告に関する声明

2014年3月3日
NPO法人監獄人権センター

本年1月21日,矯正医療の在り方に関する有識者検討会は,「矯正施設の医療の在り方に関する報告書~国民に理解され,地域社会と共生可能な矯正医療を目指して~」を法務大臣に提出した。

刑事施設における医療の問題は,既に今から10年以上前,2003年12月に出された「行刑改革会議提言~国民に理解され,支えられる刑務所へ」において一定程度指摘されていた。しかしながら,その後の法改正においては,「刑事施設においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康及び刑事施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。」との保健衛生及び医療の原則が明文化され,指名医による診療制度が創設されたほかは,従来の医療の在り方に変更が加えられることはなかった。すなわち,医療が保安面からの要請に従属し,真に必要な医療が必要なタイミングで提供されないこと,その根幹に,刑事施設における医療を,純粋な医療ではなく「矯正医療」という,矯正処遇と密接に結び付いた特殊な医療分野として捉えることの問題性,これらを克服するために不可欠な,刑事施設医療の厚生労働省への移管の必要性については,ほぼまったく議論されず,法施行後5年目の見直し作業においても,指名医診療制度以外は取り上げられなかった。

行刑改革会議提言から10年後に出された本報告書が「矯正医療の充実強化策」として提言している内容は,①矯正医療についての国民の理解,②給与水準の引き上げや兼業の許可の弾力化などをはじめとした矯正医官の待遇改善,③執務改善等の充実,④医学研究に対する支援の充実,⑤地域医療との共生,連携強化及び矯正医療の外部医療の在り方,⑥その他,となっている。しかし,提言の主眼が,「矯正医官」と呼ばれる刑事施設に勤務する医師につき,いかにしてその流出をとめ,人材を確保するか,というところに置かれていることは明白であり,「国民の理解」や「地域医療との共生」等は,医師確保に必要な条件として位置づけられている。

刑事施設で働く医師が確保できなければ,被収容者の生命身体の安全が確保できないことは明らかである。したがって,喫緊の課題として医師の確保に取り組むことは当然である。しかし,刑事施設における医療にはより根深い問題がある。この点,本報告書では,行刑改革会議提言においては取り上げられていた,被収容者の側からみた医療のニーズや,医療の保安に対する従属性の問題,さらには医療の透明性確保の問題は,医師の確保という至上命題ゆえに,敢えて置き去りにされていると言わざるを得ない。さらに,被収容者全体について詐病や不当要求を繰り返す厄介な集団として描き出し,医師が直面する困難さを浮き彫りにするという手法は,一歩間違えば,刑事施設における医療の必要性自体を否定しようとする考え方と通底しかねないものであり,大きな危惧を覚える。いうまでもなく,「すべて人は,生命,自由及び身体の安全に対する権利を有する」(世界人権宣言第3条)のであり,被収容者も決して除外されるものではない。このことは、被収容者処遇法も当然の前提としており,収容された人々が必要な医療を受ける権利は,もっとも基本的であり,かつ,もっとも傷つきやすい権利であって,その保障なくして社会への再統合はあり得ない。このことを今後の改革の基本としなければならない。

監獄人権センターは,本報告書による提言を契機として,今後,医師の確保や地域医療との連携を超えて,刑事施設医療の厚生労働省への移管という刑事施設の医療の抜本的改革に向けた取組みが開始されることを強く求めると同時に,これを期待するものである。



谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

2013年12月12日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は,本日(12月12日),加賀山領治氏(大阪拘置所,63歳)、藤島光雄氏(東京拘置所、55歳)の2名に対し,死刑を執行した。

今回の執行は,政権交代後の自民党政権における4回目の執行であり,これによって本年,谷垣法相によって執行された人の数は昨年を上回る8名に達した。今回の執行は、法務省による12月10日の世界人権デーに合わせた人権週間の直後であり、日本政府の人権意識が厳しく問われなければならない。

加賀山領治氏は,2012年7月の最高裁による上告棄却から僅か1年4か月余りでの死刑執行だった。死刑確定者は外部交通を著しく制限され,たとえ再審請求等の意思を有していても弁護人を獲得することすら困難な状況におかれている。今回の執行は,事前に執行の告知がない点とともに,死刑確定者の防御権の保障という観点からも大いに問題がある。

また、両事件とも、事件から第一審における死刑判決までの期間が短く、拙速な裁判であった。加賀山領治氏は,事件から約1年、藤島光雄氏は約1年4か月での死刑判決であった。裁判所における審理の不十分さは,藤島氏が過去に少なくとも5回にもわたり再審請求を行っていたことからも窺われる。

死刑廃止が揺るぎない国際的な趨勢となる中で,死刑制度を存置し,かつ執行を継続する日本は,国際社会において年を追うごとに特異な存在となり,孤立を深めている。日本政府は,本年3月の国連人権理事会本会合において,普遍的定期的審査における死刑制度の廃止や停止を求める数多くの勧告の受け入れをすべて拒否した。また、5月には,国連拷問禁止委員会による第2回日本政府報告書審査が行われ、死刑廃止の可能性を検討することを含め、死刑確定者の拘禁状況の改善や,法的保護手段を確実にすることが強く求められた。

本年10月から11月にかけて,自由権規約委員会において,市民的及び政治的権利に関する国際規約に基づく第6回政府報告書審査に向けた日本政府に対する論点リスト(List of Issues)が採択された。2014年7月に予定されている第6回審査は,この論点リストに基づき審査が実施される予定であり,リストでは死刑について17項目にわたり日本政府に対して情報提供を求められている。第6回審査においても日本の死刑制度について厳しい審査と勧告を受けることは必至である。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

2013年9月12日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は,本日(9月12日),熊谷徳久氏(東京拘置所,73歳)に対し,死刑を執行した。

今回の執行は,政権交代後の自民党政権における3回目の執行であり,これによって本年,谷垣法相によって執行された人の数は6名に達した。熊谷徳久氏の事件では,殺害された被害者数が1名であり,第一審において無期懲役の判決を受けていた。しかし、検察官上訴により控訴され、控訴審において死刑判決を受けた。今回の執行は,「死刑は最も重大な犯罪に厳格に限定されるべきであ」り,かつ,「高齢者…の執行に関し,より人道的なアプローチをとることを考慮すべきである」とした国連自由権規約委員会による勧告(2008年)に照らしても,問題があると言わざるを得ない。

死刑廃止が揺るぎない国際的な趨勢となる中で,死刑制度を存置し,かつ執行を継続する日本は,国際社会において年を追うごとに特異な存在となり,孤立を深めている。日本政府は,本年3月の国連人権理事会本会合において,普遍的定期的審査における死刑制度の廃止や停止を求める数多くの勧告の受け入れをすべて拒否し,死刑制度の存廃は各国が決すべき問題であって,制度について議論すら行う意思がないとの回答を行った。また5月には,国連拷問禁止委員会による第2回日本政府報告書審査が行われ、死刑廃止の可能性を検討することを含め、死刑確定者の拘禁状況や法的保護手段と保護を与えられることを確実にするよう強く求められた。

しかし,日本政府・法務省は,こうした勧告を一顧だにすることなく,2020年オリンピックの開催都市が東京に決まった直後,約4か月半ぶりとなる死刑の執行を行った。オリンピック憲章は,「オリンピズムの目標は,スポーツを人類の調和のとれた発達に役立てることにあり,その目的は,人間の尊厳保持に重きを置く,平和な社会を推進することにある」としている。日本政府は、死刑制度を存置し,執行を推し進めることは,今日においては、人間の尊厳に重きを置く平和な社会の推進とは相いれなくなっていることを認識するべきだ。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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-拷問禁止委員会の第2回政府報告書審査を受けて-
被拘禁者の人権状況の改善と死刑制度・死刑確定者処遇の見直しを求める声明

2013年6月3日
NPO法人監獄人権センター

1 審査の概要

拷問禁止委員会は,拷問等禁止条約の実施状況に関する第2回日本政府報告について5月21,22日に実施された審査を踏まえ,2013年5月31日最終見解を公表した。拷問禁止委員会は,拷問禁止条約の実施状況を監視するために条約に基づき設置された条約機関であり,日本は,同条約の批准国として,委員会から勧告された点につき改善に向けて努力する義務を負う立場にある。

監獄人権センターは2007年の第1回審査の時に引き続き,第2回審査にも報告書を提出のうえ国連欧州本部(ジュネーブ)に代表を送り,委員会に対する働きかけを行い,審査を傍聴した。

公表された最終見解に取り上げられたテーマは,報道された戦時性奴隷制(いわゆる従軍慰安婦)を含む女性に対する暴力の問題だけでなく,代用監獄(代用刑事施設)とそこで行われる取調べ,出入国管理および難民行政,刑事拘禁施設における処遇,死刑制度,精神医療,国内人権機関,人権研修など多岐に及んでいる。勧告内容も,2007年の第一回審査における勧告を繰り返すだけでなく,懸念の内容も勧告もそれぞれ内容的に厳しい内容に高められている。

2 被拘禁者の人権状況について

まず,監獄人権センターとして特に力を入れた刑事施設の被収容者の処遇について13項で,次のように勧告した。

「拘禁状況を改善し,刑事施設の定員を増加させるための締約国の努力にもかかわらず,委員会は依然として次の点に懸念を有する(第 11条,第16条)

(a)女子刑務所を含む一定の施設における過剰収容
(b)拘禁施設内での医療への不十分なアクセスと医療スタッフの深刻な不足
(c) 刑務所において心の健康に関するケアが十分に提供されていないこと,及び精神疾患のある受刑者に対して独居拘禁が広範に使用されていること,それによって自殺企図のリスクが増加していることを示す報告
(d)第二種手錠や拘束衣などの拘束具の使用に関して,十分な保護手段及び監視メカニズムが欠如していること。

 締約国は,以下の措置を講ずることによって,国連被拘禁者処遇最低基準規則に適合した形で刑事施設における拘禁条件を改善するための努力を強化するべきである。

(a)特に,非拘禁措置に関する国連最低基準規則(東京ルール)と女性被拘禁者の処遇及び女性犯罪者の非拘禁措置に関する国連規則(バンコクルール)に照らし,拘禁の代替としての非拘禁措置の広い適用を通じて,高い収容率を引き下げること
(b)自由を奪われたすべての人のために心身の健康に対する十分なケアを提供すること
(c)条約の下における締約国の義務を遵守するために,第二種手錠の使用と,その使用時間の長さを厳格に監視し,被拘禁者を拘束する器具の使用を完全に禁止することを検討すること


 被拘禁者の人権状況については,非拘禁措置の導入による過剰拘禁の克服,医療の改善,拘束具につき,その廃止を含む再検討が勧告された。いずれも日本の刑事施設の状況に即した的確なものである。

次に独居拘禁に関して14項では次のように述べている。

「委員会は,独居拘禁がしばしば期間の制限なく,広範囲かつ長期間にわたって使用され続けていること,及び,受刑者の隔離の決定は,施設の長の裁量に委ねられていることに,依然として強い懸念を有する。委員会は,刑務所の医師が,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律の下で隔離された受刑者の定期的な医療上の検査に直接関与していること,このような実務が,受刑者の健康状態を守る上で主要な要素である,医師と患者の関係を悪化させる可能性があることを遺憾に思う (第2条,第11条,第16条)。

 条約及び国連被拘禁者処遇最低基準規則の規定を考慮し,委員会は締約国に対し,以下の点を強く求める。

(a)独居拘禁は,厳しい監督のもとで最小限の期間,かつ司法審査が可能な状況での最後の手段に留まることを確実にするため,法律を改正すること。また,締約国は,隔離措置の決定のための明確かつ具体的な基準を確立するべきである
(b)独居拘禁の期間を通じて,資格をもった医療従事者によって被拘禁者の身体的および精神的状態について定期的に監視及び検査するシステムを確立し,そうした医療記録を被拘禁者とその弁護士に開示すること
(c)独居拘禁に付されている期間においても,被拘禁者にとって心理的に意味のある社会的接触の程度を引き上げること。
(d)現在行われている独居拘禁使用の実務について数値を出し評価すること。および,独居拘禁の使用とその条件に関する具体的で細分化された情報を提供すること。


独居拘禁は人の肉体的,精神的健康を根底から破壊する危険性を持っている。監獄人権センターは,その設立の当初から独居拘禁に対する厳しい制限を強く求めてきた。資格をもった医療従事者によって被拘禁者の身体的および精神的状態について定期的な監視と検査のためのシステムを一日も早く実現しなければならない。

3 死刑制度と死刑確定者の人権状況について

次に委員会は死刑について15項において,次のように勧告している。

「委員会は締約国における死刑確定者の拘禁状況,とりわけ以下の点について,深い懸念を抱いている(第2条,11条,16条)。

(a)死刑確定者の執行を取り巻く不必要な秘密主義と不明確さ。超法規的,略式または恣意的処刑に関する特別報告者が述べているように,死刑確定者やその家族に対して死刑執行の日時の事前通知を拒否することは,明確な人権侵害である(E/CN.4/2006/53/Add.3,para.32)。
(b)死刑確定者に対して多くの場合長期間にわたり,そしていくつかの事例では30年をも超える期間,独居拘禁を用い,かつ,外部との接触を制限していること
(c)弁護士への秘密のアクセスが制限されていることを含め,弁護人による援助を受ける権利への妨害
(d)上訴の権利を行使せずに有罪となり死刑を科される被告人の数が増加していることを考慮し,死刑事件に義務的な上訴制度が欠如していること。
(e)2007年以降,恩赦の権限が行使されておらず,恩赦,減刑や刑の執行の延期を追求するための手続に透明性が欠如していること。さらに,委員会は,小林薫の事例(小林薫氏は二度にわたる再審請求が棄却され,3度目の再審請求を準備しようとしていた矢先の2013年2月に死刑を執行された。-訳注)におけるように再審手続きや恩赦の請求が死刑の執行停止につながらないことを深く遺憾に思う。
(f)心神喪失の状態にある死刑確定者の執行を禁止している刑事訴訟法479条1項に反して,藤間静波の事例におけるように,たとえその人物が裁判所によって精神疾患であると認定されていても,死刑が執行されたことについての報告があること。
 

委員会による前回の勧告(para.17)及び規約人権委員会の勧告(CCPR/C/GC/32,para.38),さらには超法規的,略式または恣意的処刑に関する特別報告者による報告(A/HRC/14/24/Add.1,paras.515以降)に照らして,委員会は,とりわけ以下の手段により,死刑確定者が条約により規定されたすべての法的保護手段と保護を与えられることを確実にするよう,締約国に強く求める。

(a)死刑確定者とその家族に,予定されている死刑執行の日時を,合理的な事前の通知を与えること
(b)死刑確定者に対する独居拘禁の規則を改訂すること
(c)手続のすべての段階において,死刑確定者に弁護人による効果的援助を保障し,かつ,死刑確定者とその弁護士とのすべての面会について厳格な秘密性を保障すること
(d)死刑確定者に恩赦,減刑,刑の執行の延期実際に利用可能とすること。
(e)第一審における死刑の有罪判決の効力を未確定とし,死刑事件に義務的な再審査の制度を導入すること。
(f)死刑確定者に精神疾患があることについて信頼し得る証拠がある場合は,その全ての事案について独立した検討を確実に行うこと。さらに,締約国は,刑事訴訟法479条1項に従って,精神疾患を持つ被拘禁者は執行されないことを確実にすべきである
(g)性別,年齢,民族性と犯罪の別により細分化された死刑確定者についての情報を提供すること。
(h)死刑を廃止する可能性を検討すること


死刑制度を廃止する可能性についても検討するよう勧告した点は,第1回勧告にはなく,前回の最終見解より踏み込んだものと評価できる。

4 刑事司法制度とりわけ代用監獄制度と取調について

代用監獄制度については,10項において,日本政府による,同制度の廃止も改善も必要ではないとの立場を遺憾とし,(a)捜査と拘禁の機能の分離を実質的に確保するため立法その他の措置をとること,(b)警察留置場に拘禁可能な期間に上限を設けること,(c)起訴前の全被疑者に,取調べの過程を通じて弁護人との秘密のアクセス,逮捕時点からの法律扶助,事件に関する警察の全記録へのアクセス,(警察から)独立した医療を受ける等の権利を含め,基本的な法的保護措置を保障することを勧告した。その上で,我が国の法と実務を国際基準に完全に合致させるべく,代用監獄制度の廃止を検討するよう勧告している。

取調べと自白について,委員会は,11項において,日本の刑事司法制度が実務上,自白に強く依存していること等に深刻な懸念を表明し,拷問及び虐待により得られた自白が証拠として許容されないよう,具体的に以下の点を勧告した。すなわち,(a)取調べ時間の長さについて規則を設け,規則違反には適切な制裁を設けること,(b)自白を証明のための中心的な要素とし,これに依拠する実務をやめ,犯罪捜査手法を改善すること,(c)取調べの全過程の電子的記録を実施し,その記録を法廷で利用可能とすること,等である。

今回の審査では,モーリシャスのDOMAH 委員から「日本は自白に頼りすぎではないか。これは『中世』の名残である。」という手厳しい批判がなされた。自由権規約委員会は,2008年の最終見解で廃止を検討することを求めたが,拷問禁止委員会は,「自白に強く依存していること等に深刻な懸念」を表明し,代用監獄について「廃止」という言葉をはじめて用いた。

委員会は12項では,刑事施設および留置施設の被収容者からなされる不服申立について,その取扱いに特化した独立つ効果的な機関の設立を考慮するよう求め,公務員による虐待等の訴えについての迅速・公平かつ完全な調査に加え,事案の重大性により当該公務員の訴追と処罰を確実にすること等を勧告した。

5 結論

監獄人権センターは,委員会が詳細な審査に基づき,的確で詳細にわたる勧告をされたことに深く敬意を表する。日本政府とりわけ法務省はこれらの勧告の一つ一つを重く受け止め,誠意をもってその解決に向けて努力することを強く求めたい。

刑事拘禁の分野については,2005-6年の監獄法改正以来,刑事施設だけでなく留置施設や入管収容施設にもそれぞれ視察委員会が設立され,拘禁された環境における人権保障のためのセーフガードとして活動し,処遇の改善に取り組んできた。独立性,実効性や情報開示などにおいて視察委員会制度は未だ十分とは言い難く,問題は残るが,刑務官による暴行などの事件は減少しているし,仮に発生した場合も対応は迅速に行われるようになっている。進歩的な処遇が取り入れられたり,処遇の条件にも改善されてきた点が認められる。

しかし,拷問禁止委員会が今回の勧告で取り上げている,刑務所医療や独居拘禁に関する問題や死刑制度と死刑確定者の処遇をめぐる状況の改善は遅々として進んでいない。最近では,監獄法改正によって開かれた面会や通信などの外部交通の扉を狭めようとする動きも各地の刑事施設から報告されている。

監獄人権センターは,これらの勧告の実現に向け,政府とりわけ法務当局との対話を継続し,これらの課題の解決のために国内でも努力する所存である。



谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

2013年4月26日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は,本日(4月26日),濱崎勝次氏,宮城吉英氏(いずれも東京拘置所)の2名に対し,死刑を執行した。

今回の執行は,自民党政権の復活後2回目,そして谷垣法相による前回の執行から僅か2か月余りでの執行である。谷垣法相は,昨年12月の就任以来,記者会見において,死刑制度そのものについて肯定的な態度をし,実際に法相就任から2か月足らずで死刑執行を行った。前回に続き,今回の執行も,法相自身による慎重な検討がなされたとは到底考えられない。

さらに,濱崎勝次氏については,2011年12月の死刑判決確定から1年4か月余りという短期間での死刑執行であった。死刑確定者は外部交通を著しく制限され,たとえ再審請求等の意思を有していても弁護人を獲得することすら困難な状況におかれている。今回の執行は,事前に執行の告知がない点とともに,死刑確定者の防御権の保障という観点からも大いに問題がある。

死刑廃止が揺るぎない国際的な趨勢となる中で,死刑制度を存置し,かつ執行を行う日本は,国際社会において年を追うごとに特異な存在となり,孤立を深めてきた。昨年10月には,国連人権理事会作業部会において第2回普遍的定期的審査(UPR)が実施され,24か国もの国々が死刑制度の廃止や停止等の勧告を行った。これに対し,その後の政権交代により復活した自民党政府は,本年3月14日の同理事会本会合において,これらの勧告の受け入れをすべて拒否し,死刑制度の存廃は各国が決すべき問題であって,制度の議論すら行う意思がないとの回答を行った。しかし,死刑は生命に対する権利という最も基本的な人権にかかわるものであり,死刑制度の存廃が内政問題に留まらないことは明らかである。来る5月21日,22日には国連拷問禁止委員会による第2回日本政府報告書審査が予定されているが,死刑制度及びその運用につき,日本政府に厳しい勧告が出されることは必至である。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

2013年2月21日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は、本日(2月21日)、金川真大氏(東京拘置所)、加納恵喜氏(名古屋拘置所),小林薫氏(大阪拘置所)の3名に対し、死刑を執行した。

今回の執行は,自民党政権の復活後初めて,そして谷垣法相の就任から僅か2か月足らずでの執行である。谷垣法相は,昨年12月の就任以来,記者会見において,死刑制度そのものについて肯定的な態度を明らかにしつつ,死刑の執行については,慎重な運用が必要になるという考えを示してきた。しかし,今回の執行からは,法相自身による慎重な検討がなされたとは到底考えられない。

死刑廃止が揺るぎない国際的な趨勢となる中で、死刑制度を存置し、かつ執行を行う日本は、国際社会において年を追うごとに特異な存在となり,孤立を深めつつある。日本政府は、政権交代の前後を通じ,一貫して,条約機関による審査等において再三にわたり死刑執行の停止・廃止および制度運用につき勧告を受けてきたにもかかわらず、それらの勧告を何一つ受け入れず、死刑制度を維持し,執行を継続する姿勢を示してきた。昨年10月31日には,国連人権理事会作業部会において第2回普遍的定期的審査(UPR)が実施され,24か国から死刑制度の廃止や停止等の勧告を受けている。来月開催される人権理事会本会合において結果文書の採択を控えるなかで行われた今回の執行は,自民党政権として,今後,死刑制度に関する議論や情報公開の流れを完全に封じ,定期的に死刑を執行することで死刑確定者数の減少を目指していく姿勢を打ち出したものと言える。

今回の執行は,死刑が存置されている場合であっても,その適用を可能な限り制限しようとする国際人権基準に照らしても,問題が大きい。日本では,拷問禁止委員会や規約人権委員会からの度重なる勧告にもかかわらず,死刑判決に対して上級審に上訴することは義務的とはされていない。金川氏および小林氏は,それぞれ自ら控訴を取り下げて第一審における死刑判決が確定した。また加納氏は,第一審の無期懲役判決に対して,検察官が死刑を求めて控訴した結果,死刑判決が確定するに至っている。死刑の適用は極めて慎重になされているとする政府の見解とは,かけ離れた実態が明らかである。

監獄人権センターは今回の死刑執行に強く抗議するとともに、死刑執行の停止、そして死刑制度廃止の政策的実現に向け、今後も取り組んでいく決意である。

以上

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取調べの全過程の録音・録画を求める要請書

2012年11月7日
 

法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」
部会長 本田勝彦 殿

 法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会において取調べの録音・録画の法制化について議論が進められている中、私たち取調べの可視化を求める市民団体連絡会は、全過程の録音・録画が早急に実現されるよう要請いたします。

 足利事件や布川事件など冤罪事件の教訓として、取調べの全過程の録画が必要であるという考えは、日本社会の中ですでに浸透しつつあります。そうした中、検察および警察は、取調べの録音・録画の試行を進めていますが、全過程の録音・録画については未だに消極的な姿勢をみせています。

 しかし、取調べの一部の録画では、被疑者がどのように供述したか、その過程を知ることができません。そのため、取調官による被疑者への威嚇、脅迫や暴力的な行為、また取調官による誘導を監視し是正できないことは、これまでの冤罪事件の被害者の証言からも明らかです。

 諸外国では取調べの「可視化」は全過程の録音・録画が大前提であり、捜査官自らが、違法な取調べを抑制し、虚偽の自白を防止するだけでなく、信用性の高い証拠が作成され、裁判における正確な事実認定に寄与する効果が見られたなど、その利点を挙げています。こうした諸外国の経験や技術は、日本で全過程の録音・録画を義務化するにあたり、大いに参考になると考えます。

 取調べの録音・録画の法制化の方向性を示すにあたり、法制審議会は、違法な取調べを適正化し、取調べを受けるすべての人の権利を保障することを第一の目的とし、全過程の録音・録画が基本であることを明確に打ち出すべきです。

 また、取調べの全過程の録音・録画の法整備に加え、代用監獄制度の廃止、証拠の全面開示など、国際的な条約機関から繰り返し勧告されている点についても、国際人権基準に沿った改革の方向性を示すよう、あわせて要請いたします。


取調べの可視化を求める市民団体連絡会
【呼びかけ団体】
アムネスティ・インターナショナル日本/監獄人権センター/日本国民救援会/ヒューマンライツ・ナウ

【構成団体】国際人権活動日本委員会/志布志の住民の人権を考える会/社団法人自由人権協会/人権と報道・連絡会/菅家さんを支える会・栃木/富山(氷見)冤罪国賠を支える会/フォーラム平和・人権・環境/名張毒ぶどう酒事件全国ネットワーク/袴田巖さんの再審を求める会/袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会/「冤罪・布川事件の国家賠償請求訴訟を支援する会」/無実のゴビンダさんを支える会/無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会


この要請書は、以下にも複写をお送りしています。

滝 実 法務大臣
 


滝実法務大臣による死刑執行に抗議する

2012年9月27日
NPO法人監獄人権センター

   滝実法務大臣は、本日(9月27日)、江藤幸子氏(仙台拘置支所)、松田幸則氏(福岡拘置所)の2名に対し、死刑を執行した。女性に対する死刑執行は,1997年8月1日以来15年ぶりであり,松田氏は上告を取り下げにより,必要的上訴の要請を充たさないまま死刑判決が確定した。

   今回の執行は,滝法相による前回の執行から僅か2か月足らず、民主党政権下では本年8月3日に続き4度目の執行である。滝法相は,本年6月に行われた就任直後の記者会見において、個々の死刑判決について判断をしていくと述べていたが,短期間で相次ぐ執行は,慎重な検討がなされなかった可能性を強く示唆するものである。

   死刑廃止が揺るぎない国際的な趨勢となる中で、死刑制度を存置し、かつ執行を行う日本は、年を追うごとに際立った存在となりつつある。日本政府は、自民党政権時代から,条約機関による審査等において再三にわたり勧告を受けてきたにもかかわらず、それらの勧告を何一つ受け入れず、死刑制度を維持する姿勢を示してきた。そして今回の執行は,10月10日の世界死刑廃止デーを目前に控え、かつ,国連総会による死刑執行停止決議採択に向けて準備が行われているさなかで敢行された。これは「死刑の存廃や当面の執行停止、死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続していく」(民主党「政策インデックス2009」)との方針を完全に捨て去り,従前どおりの秘密主義に回帰し,定期的な死刑執行を目指していくことを宣言したに等しい。

   監獄人権センターは今回の死刑執行に強く抗議するとともに、死刑執行の停止、そして死刑制度廃止の政策的実現に向け、今後も取り組んでいく決意である。

以上

滝実法務大臣による死刑執行に抗議する

2012年8月3日

NPO法人監獄人権センター
代表 村 井 敏 邦
事務局長 田鎖麻衣子

  滝実法務大臣は,本日(8月3日)、服部純也氏(東京拘置所)、松村恭造氏(大阪拘置所)の2名に対し、死刑を執行した。今回の執行は滝法相が就任してから僅か2か月足らず、民主党政権下では本年3月29日に続き3度目の執行である。

  死刑廃止が揺るぎない国際的な趨勢となる中で,死刑制度を存置し,かつ執行を行う日本への批判は,年を追うごとに高まっている。これまでにも日本政府は,条約機関による審査において再三にわたり勧告等を受けてきたが、それらの勧告を何一つ受け入れず,死刑制度を維持する姿勢を示してきた。これは,民主党が「政策インデックス2009」において死刑の存廃や当面の執行停止,死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続していくと宣言し,政権与党となってからも,何ら変わることがない。

  すなわち,2011年末には平岡秀夫法務大臣(当時)のもとで,1992年以来初めて,死刑執行のない年が出現するに至ったが,本年3月には,後任の小川敏夫法務大臣(当時)によって「死刑の在り方についての勉強会」は打ち切られ,その後に開始された死刑執行方法に関する政務三役での検討にいたっては,一切の議論が公開されず秘密にされたままである。これらは、死刑の執行停止や廃止につながり得るあらゆる動きを封じたうえで,定期的な死刑執行状況を作り出すための準備であったと言わざるを得ない。

  さらに,今回執行された2名がなぜ選ばれたのかについても,全く不明である。滝法相は,就任直後の記者会見において,個々の死刑判決について判断をしていくと述べていたが,服部氏は一審で無期懲役判決となり職業裁判官の間ですら死刑の判断が分かれた案件であり,松村氏に至っては控訴取下げにより死刑判決が確定し,国連諸機関から求められている必要的上訴の要請に真っ向から反する事案である。就任から2か月足らずの間に,慎重な検討がなされたとは到底考えられない。法務省は,執行対象の選定過程を含め,過去の死刑執行に関する情報を明らかにしたうえで,すべての死刑の執行を停止し,死刑廃止に向けた検討を開始すべきである。

  監獄人権センターは今回の死刑執行に強く抗議するとともに、死刑執行の停止、そして死刑制度廃止の政策的実現に向け、今後も取り組んでいく決意である。

以上

死刑執行の停止を求める緊急市民アクション

法務大臣 小川敏夫 殿

 2009年7月、民主党はその政策集「INDEX2009」において、次のように掲げました。「死刑制度については、死刑存置国が先進国中では日本と米国のみであり、EUの加盟条件に死刑廃止があがっているなどの国際的動向にも注視しながら死刑の存廃問題だけでなく当面の死刑の停止や死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続していきます。」多くの市民が、INDEXに掲げられた政策の実現に期待し、民主党は政権の座につきました。

 「当面の死刑の停止」を議論することは、民主党が掲げた政策です。ところが、小川敏夫法務大臣は、1月13日の大臣就任以来、死刑の執行は法務大臣の職責であると強調して正面から執行停止を否定し、在任中に死刑の執行を命じる意思を繰り返し明らかにしています。

 死刑という刑罰についてのみ、その執行が法務大臣の命令によるとされたのは、死刑が一度執行すれば取り返しのつかない究極の刑罰であることから、慎重を期すためであるとされています。法務大臣には、個々の事件の再吟味や死刑確定者の事情、その他内外情勢などを踏まえ、命令を発しない方向での慎重な政治判断をすることが認められているのです。

 しかし、小川大臣の発言は「初めに死刑執行ありき」ともいうべきもので、死刑執行に対する慎重な配慮を捨て去り、むしろ大臣としての職責を放棄するものといっても過言ではありません。

 実際に、過去の執行では、法務大臣が慎重な判断を欠いたために、誤った執行がなされてきたと疑われています。再審請求を準備しながら死刑執行をされた人々の中には、DNA鑑定によって無実が明らかにされる可能性があった人も存在します。また、心神喪失の状態にある人を執行することは刑事訴訟法により禁じられています。現に相当数の人々が深刻な精神状態に至っていますが、これらの人々は、自ら再審請求などの法的手段に訴えることはできず、また、心神喪失状態にあると主張することもできません。しかし、精神状態を調査するための信頼できる制度が存在しない日本の現状では、違法な死刑執行の可能性を払しょくすることができないのです。誤った死刑執行に対して、法務大臣は、どのように責任をとるのでしょうか。

 死刑は、最も基本的かつ重要な人権である、生命に対する権利を侵害する刑罰です。日本は、国際人権(自由権)規約委員会をはじめとする国連機関から、繰り返し、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう、勧告されてきました。

 私たちは、小川法務大臣に求めます。法務大臣としての職責を果たすため、死刑の執行を停止したうえで、死刑制度についての冷静な議論を行ってください。そのために、外部有識者による開かれた審議機関を設置し、国会における議論へとつなげて下さい。

死刑執行の停止を求める市民一同


小川敏夫法務大臣による死刑執行に抗議する

2012年3月29日

小川敏夫法務大臣による死刑執行に抗議する

NPO法人監獄人権センター
代表 村 井 敏 邦
事務局長 田鎖麻衣子
 

野田内閣の小川敏夫法相は本日(3月29日)、古澤友幸さん(東京拘置所)、上部康明さん(広島拘置所)、松田康敏さん(福岡拘置所)の3名に対し、死刑を執行した。今回の執行は小川法相が2012年1月に就任して以来、初めての死刑執行で、民主党政権下では2010年7月28日の千葉元法務大臣による死刑執行以来、1年8カ月振り2度目の執行となった。

政権党である民主党はその「政策インデックス2009」において、次のように掲げている。「死刑存廃の国民的議論を行うとともに、終身刑を検討、仮釈放制度の客観化・透明化をはかります。死刑制度については、死刑存置国が先進国中では日本と米国のみであり、EUの加盟条件に死刑廃止があがっているなどの国際的な動向にも注視しながら死刑の存廃問題だけでなく当面の執行停止や死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続していきます。」

その後、2011年10月、衆議院内閣委員会において、藤村修官房長官は、平岡秀夫前法相が死刑執行に慎重姿勢を示していることに関し、「野田内閣において死刑を廃止する方針はまったくない」と表明し、平岡大臣にかわり2012年1月に就任した小川法相は、「大変辛い職務ではあると思うが、職責をしっかりと果たしたい」と死刑執行に積極的な発言をしてきた。これらは民主党の政権公約に反するばかりか、死刑廃止に向かう国際的な潮流にも逆行するものであった。

さらに法務省では2010年8月より2011年11月まで「死刑の在り方についての勉強会」を開催してきたが、小川法相は2012年3月に打ち切りを決め、報告書を公表した。報告書では「死刑制度の存廃に関する主張については、廃止論と存置論で大きく異なっており、そしてそれぞれの論拠については各々の哲学や思想に根ざしたものであり、一概にどちらか一方が正しく、どちらか一方が誤っているとは言い難いものであるように思われる」としながら、他方で、勉強会では死刑冤罪被害者からの意見を聴取しないなど極めて不十分なものであり、敢えて打ち切りを強行したことは、執行準備のための措置であったと言わざるを得ない。

死刑廃止は今や国際的な趨勢である。これまでに国際人権基準の審査において、再三にわたり日本の死刑制度について勧告等を受けており、国連総会も繰り返し死刑廃止を視野に入れた死刑執行停止を求めている。2010年7月以来の死刑執行の事実上の停止状態は国際的に高く評価されていたところであり、今回の死刑執行は国際人権基準から見た日本の評価を失墜させることになった。

監獄人権センターは今回の死刑執行に強く抗議するとともに、死刑執行の停止、そして死刑制度廃止の政策的実現に向け、今後も取り組んでいく決意である。

以 上

小川敏夫法務大臣に対する要請書

2012年1月16日

法務大臣  小  川  敏  夫  殿

〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-28-13-8F
菊田法律事務所気付
NPO法人監獄人権センター
TEL / FAX 03-5379-5055
代    表         村井敏邦
事務局長      田鎖麻衣子

要請書

第1 要請の趣旨
 1 国連拷問禁止委員会、国際人権(自由権)規約委員会による総括所見をふまえて、死刑制度に関して外部有識者等からなる調査会を設置し、死刑廃止に向けた調査検討を行うとともに、その間は死刑の執行を停止すること。
 2 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律の規定とその運用の齟齬について調査を行い、行刑改革会議提言の理念に則った刑事被収容者処遇改革を行うこと。
 3 無期刑受刑者の仮釈放制度を見直し、受刑者自身に審査請求権を付与すること。
 4 罪を犯した人の更生と円滑な社会復帰を促進する施策の拡充を図ること。
 

第2 要請の理由

 日本の刑罰・刑事拘禁政策は、長年にわたり国際人権基準に照らし厳しい批判にさらされてきました。2009年の政権交代により、わが国の人権状況を国際水準へと引き上げる大きなチャンスが到来したものと、当センターとしても心より期待しましたが、残念ながら大きな進展がみられないまま、2012年を迎えました。もとより、わずかな期間で容易に成果が出せるほど、法務行政が直面する課題は容易なものではないことは、十分に承知しております。しかし、近時の法務行政をみるにつけ、政権交代の効果が発揮されず、改革に向かう姿勢そのものに疑念を抱かざるをえない場面も生じています。引き続き課題が山積する状況において、実現に向けてぜひとも優先的に取り組んで頂きたい事項を以下に掲げます。


1 死刑廃止を検討する死刑制度調査会の設置と死刑執行の停止
当センターは、アムネスティ・インターナショナル、国際人権連盟(FIDH)、世界死刑廃止連盟(WCADP)といった国際人権NGOとともに、日本の死刑問題につき、国連条約機関をはじめ国際社会に正確に伝えるという重要な活動を担ってきました。死刑の問題が、今や日本が抱える最大の人権問題であることは、国際社会の常識です。国連の条約機関や人権理事会による勧告においても、死刑執行の停止と、死刑廃止に向けた措置をとることが繰り返されております。また、飯塚事件の例にみられるように、誤った死刑執行の可能性を完全に断つ必要もあります。

2010年7月に千葉景子法務大臣(当時)による死刑執行がなされた後、同年8月から、法務省に死刑の在り方に関する勉強会が設置され、会合が重ねられてきました。しかし、残念ながらこの勉強会はあくまで省内のものであり、平岡秀夫前法務大臣らの努力にもかかわらず、死刑制度における具体的な問題点の指摘や、死刑制度に関する国民的議論の喚起には至らないまま、今日を迎えています。たとえば、千葉大臣はその在任中、すべての死刑確定者の精神状態を調べるように指示し、広範囲に精神鑑定が実施されたものの、心身喪失に該当するケースはなかったと報道されています(2011年2月11日付朝日新聞)が、その具体的な内容は明らかにされず、その後の議論にも活かされていません。ところが、その後も、心神喪失を理由として死刑執行停止を求める人権救済申立が、日本弁護士連合会になされているなど、死刑確定者の精神状態をめぐる問題は、依然として解明されないままです。死刑制度を運用する法務省内部の勉強会において、知識と理解を深めることには限界があります。今こそ、外部有識者等からなる調査会を設置する必要があります。

また、名称および形態のいかんをとわず、死刑制度の在り方について検討を進める一方で死刑の執行を継続することは背理です。大臣は、就任時の記者会見において、「大変つらい職務ではあると思いますが、私はその職責をしっかりと果たしていくのが責任である」「議論が必要だから、議論しているから、職責を果たさないということではなくて、やはり、職責そのものが辛い職務であるとは思いますが、果たすと考えております」と発言され、死刑執行に前向きな姿勢を示すと同時に、死刑制度に関する議論と執行問題とを切り離す意向を強調されました。さらに、その後の取材に対して「(死刑を)執行する」と明言されたとも伝えられています。しかし、他の刑罰と異なり、死刑の執行のみが法務大臣の命令によるものとされたのは、死刑という究極の刑罰がもたらす結果の重大性に鑑み、その執行について法務大臣の高度な政治的判断を認めたものです。したがって、確定記録も検討しないうちに「執行する」と述べることは、むしろ職責の放棄ともいえます。さらに、死刑の執行を継続した状態で、制度についての冷静な議論はなしえません。死刑制度をトータルに見直す作業を開始し、その間の死刑執行を停止することは、喫緊の課題です。

日本が、2011年の終わりを死刑執行のない状態で迎えたことを、国際社会は大いに歓迎し、日本の新しい法務大臣の姿勢に対しては、かつてないほどの注目が世界中から集まっております。法務大臣におかれては、死刑の執行停止を今後も継続されるよう、強く求めます。


2 刑事被収容者処遇改革の遂行
刑事収容施設および被収容者等の処遇に関する法律(刑事被収容者処遇法)は、その附則により、施行から5年以内に見直しを行うことが求められていましたが、その見直し時期であった2011年、結局、改正は規則レベルのものに留まりました。

しかし、施行から年数を経るにしたがい、当初の新処遇法の理念を蔑にした実務が、各地の刑事施設でみられるようになり、大きな人権問題となっています。とくに、外部交通に対する制約は、受刑者のみならず死刑確定者に対しても法の趣旨を無にする取扱いが拡大しており、こうした実務の横行を許す法の規定自体を見直す必要性が高まっています。また、徳島刑務所暴動事件にみられるように、先般の法改正で改革が見送られた医療や懲罰制度、そして代用監獄制度など、積み残しの課題も多くあります。また、名古屋刑務所事件という悲惨な人権侵害を経てもなお、刑事施設職員による被収容者に対する暴行事件が後を絶たず、刑務官に対する人権教育の根本的な見直しも喫緊の課題です。

附則の文言にとらわれず、刑事被収容者処遇法の運用状況の調査を継続し、必要な法改正を行うべきです。


3 無期刑受刑者の仮釈放制度の見直し
現状の無期刑の実態は、すでに仮釈放の可能性をほとんど断たれた「終身刑」と化しています。社会復帰の適格がありながら、高齢で帰住先がないために、一生を塀の中で終える人も少なくありません。法務省における勉強会の結果を踏まえ、無期刑受刑者の仮釈放実態については情報公開が進み、仮釈放審査にも一定の改善が加えられましたが、無期刑受刑者に対する仮釈放審理を求める請求権の付与や、その請求にあたっては代理人弁護士の選任を可能とすること、審理手続を準司法化し公正さを高めるなどの改革については、まったく手つかずのままです。

また、死刑廃止の議論との関連においても、たとえば、仮釈放申請までの最低服役期間など、無期刑受刑者に対する仮釈放制度を新たな角度から議論することが必要と考えます。


4 更生と社会復帰のための施策
裁判員制度が実施され、市民の間でも、罪を犯した人の更生や社会復帰への関心が大いに高まってきました。その反面、更生・社会復帰に向けた刑務所内での処遇プログラムはいまだ内容・対象範囲ともに限られたものに留まっており、各施設に配置された社会福祉士等が果たす役割も限定され、本当に支援を必要とする人々のニーズには応じられていないのが実情です。更生と社会復帰のための支援は、罪を犯した人々が社会の一員としての生活を再建していくために不可欠のものであり、その結果として再犯も防止されるという極めて重要なものです。こうした目標および効果は、刑務所での処遇をいたずらに厳しく制限的にしたり、さらには厳罰化を進めることで達成されるものでは決してありません。

厳しい予算状況下ではありますが、必要な手当てをすることによって、必ずプラス効果が現れる分野であり、前向きな取り組みを進められるよう求めます。

以  上

死刑廃止についての議論を開始し、死刑執行の停止を求める緊急アピール

いま、日本の社会では、かつてないほど死刑をめぐる議論が盛んになっています。
千葉景子法務大臣(当時)による死刑執行と、それに続く東京拘置所の刑場公開は、世界の耳目を集めました。裁判員裁判における死刑判決はいずれもマスコミで大きく取り上げられてきました。とりわけ、絞首刑の残虐性が正面から問われた事件は、市民が初めて死刑の合憲性判断に関与した事案として注目を浴び、同事件を契機として、朝日新聞(11月4日付)、西日本新聞(11月11日付)、信濃毎日新聞(11月2日付)、愛媛新聞(11月3日付)、茨城新聞(11月13日付)等の社説でも取り上げられるなど、死刑制度の是非に関する議論の開始を求める声が高まりました。足利事件・布川事件と、相次ぐ無期刑受刑者に対する再審無罪判決は、過去の死刑判決に対する疑問をも生み出しています。さらに、オウム真理教関連事件で起訴された13名の元教団幹部らに対する死刑判決の確定を受け、今後の死刑執行の是非をめぐっては、様々な意見が飛び交っています。

2011年の終わりを目前に控えた現在、死刑の執行が準備されているといわれています。しかし、果たしてそれでよいのでしょうか。死刑制度をめぐっては、長い間、内外から様々な問題点が指摘されてきました。それらの一端が、今日、ようやく人々の目に触れ、問題意識が芽生えるまでになってきたのです。こうした状況において、私たちの社会が選択すべきなのは、死刑の執行を急ぐことではありません。今こそ、国会において、死刑制度に関する徹底した議論と調査が開始されるべき時です。そして、冷静に議論・調査を行う環境を確保するため、少なくとも議論が行われている間、死刑の執行は停止される必要があります。死刑は、人間の生命を奪う究極の刑罰です。政治における党派の利害対立を超え、真摯かつ冷静な議論がすみやかに開始されることを、求めます。

2011年12月13日

雨宮 処凛(作家)
池田 香代子(翻訳家)
池田 浩士(京都大学名誉教授)
太田 昌国(評論家)
香山 リカ(精神科医)
川村 湊(文芸評論家)
木谷 明(元裁判官、法政大学教授)
坂上 香(津田塾大学教員、ドキュメンタリー映像作家)
新谷 のり子(歌手)
田口 真義(裁判員経験者)
土井 香苗(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)
中山 千夏(作家)
森 達也(映画監督、作家)
(50音順)
※この緊急アピールの取りまとめは、アムネスティ・インターナショナル日本、死刑廃止条約の批准を求めるフォーラム90のご協力を得て、監獄人権センターが担いました。

 
藤村内閣官房長官の発言に対する抗議声明

2011(平成23)年10月28日

内閣総理大臣 野田佳彦   殿
内閣官房長官 藤村修   殿

抗 議 書

 報道によれば、本年10月26日、衆議院内閣委員会において、藤村修官房長官は、平岡秀夫法相が死刑執行に慎重姿勢を示していることに関し、「野田内閣において死刑を廃止する方針はまったくない」と表明したとされています。さらに、「最後の最後には悩み抜いて(執行する)、というのが法務大臣の役割だ。平岡法相にしっかりと自分の考え方を述べよと言いたい」とも述べた、ということです。私たちは、死刑制度をめぐるこの藤村修官房長官の発言に対し、強く抗議するものです。

 民主党は、その「政策インデックス2009」において、次のように掲げています。
「死刑存廃の国民的議論を行うとともに、終身刑を検討、仮釈放制度の客観化・透明化をはかります。死刑制度については、死刑存置国が先進国中では日本と米国のみであり、EUの加盟条件に死刑廃止があがっているなどの国際的な動向にも注視しながら死刑の存廃問題だけでなく当面の執行停止や死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続していきます。」

平岡秀夫法務大臣が、「死刑の在り方についての勉強会」の会合はもとより、様々な場で死刑執行について慎重な姿勢を示し、かつ、死刑制度に関する新たな国民的議論の場の構築を模索しているのは、まさに上記の政策インデックスを具体化するものです。さらに、法務大臣は死刑の執行を命じるために存在するものではありません。むしろ、日本の死刑制度が憲法さらには国際人権法に照らして様々な問題点を有していることが明らかとなりつつある現在、そのような制度下での死刑執行は停止することこそ、法務大臣に求められている職責です。上記の藤村官房長官の発言は、日本の死刑制度に対して内外から指摘される重大な問題点を無視し、議論を封じ込めると同時に、法務大臣に対して死刑執行への圧力をかけるものであって、断じて容認することはできません。

平岡法務大臣によるイニシアティブを見守り、死刑廃止をめぐる議論を行うための環境づくりを支援することこそ、内閣総理大臣そして官房長官の役割だといえます。

私たちは、藤村官房長官が、前記発言をすみやかに撤回されると同時に、国会において、死刑廃止に関する議論が展開されるための基盤づくりに努力されるよう、強く求めます。

死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク
死刑廃止を求める市民の声
NPO法人監獄人権センター
 

 
取調べの全面可視化(全過程の録音・録画)の早期実現を求める要請書

民主党法務部門会議
座長 松野 信夫 様

取調べの可視化を求める市民団体連絡会
〈呼びかけ団体〉
アムネスティ・インターナショナル日本
監獄人権センター
日本国民救援会
ヒューマンライツ・ナウ

私たち「市民団体連絡会」は、取調べの全面可視化の実現をめざし、昨年12月、日弁連、東京弁護士3会と共催して集会を開催した団体が中心になり、結成した団体です。

貴部会が取調べの全過程の録音・録画の実現にむけ奮闘されていることに対し、敬意を表するものです。近年、志布志事件、氷見事件、そして無期懲役が確定していた足利事件や布川事件で冤罪が晴らされ、社会的に大きな関心を呼びました。そのいずれの事件でも、犯人でないにもかかわらず、ウソの「自白」をし、その「自白」が冤罪の原因となっています。

昨年起きた「厚労省元局長事件」を契機に、検察の在り方が問われ、江田五月法相(当時)は検察に対し取調べの可視化の試行を指示し、法制審議会に特別に部会を設置し、取調べの可視化の問題が検討されています。

しかし、警察や検察は、取調べの全面可視化に強く反対し、一部の録音・録画にとどめようとしています。

このようなもとで、貴部会は8月25日、冤罪を防止するために、警察・検察の取調べの録音・録画が不可欠であり、「身柄事件か在宅事件かを問わず、まだ被疑者・参考人を問わず、取調べの全過程を録音・録画する必要がある」との提言を発表されました。

民主党は、取調べの全面可視化をマニュフェストにも掲げられています。取調べの全過程の録音・録画を早期に実現するために、与党としてイニシアチブをとられることを要請します。


死刑の執行を停止し、死刑廃止に向けた議論を求める共同要請書

法務大臣 平岡秀夫 様

私たちは日本政府に対し、死刑の執行を正式に停止し、死刑制度に関する情報公開をさらに進めると共に、死刑廃止に向けた公の議論を進めるよう要請いたします。

平岡法務大臣は9月2日の就任記者会見において、死刑執行について「大変厳しい刑罰であり、慎重な態度で臨むのは当然」との姿勢を示され、「国際社会の廃止の流れや、必要だという国民感情を検討して考えていく。考えている間は当然判断できないと思う」と述べて当面執行しないとの認識を示された、と報道されています。

私たち死刑の廃止を求める個人および団体は、死刑の執行に慎重な姿勢を示し、国際的な死刑廃止の動向を踏まえて日本の死刑制度について社会全体で検討していきたいという大臣の姿勢に、賛同の意を表明いたします。

日本政府は、8月30日に「江田五月法務大臣の死刑執行命令書への署名拒否に関する質問主意書」に対する答弁書を閣議決定しました。この答弁書において政府は、刑事訴訟法475条2項の規定について、同規定は訓示規定であり、死刑という人の生命を絶つ極めて重大な刑罰の執行に関することであるため、その執行に慎重を期し、判決確定の日から六カ月以内に死刑執行命令がなされなくとも違法ではなく、職務怠慢や憲法違反にはあたらない、という旨の答弁を行っています。

そもそも日本政府はこれまで、国際社会から死刑の執行をただちに停止し、死刑制度の廃止に踏み出すよう繰り返し勧告を受けています。特に、2007年、2008年、2010年の3回にわたって、死刑存置国に対して死刑の執行を停止するよう求める決議が、国連総会で100カ国以上という多数の賛成を得て採択されています。

また国連の自由権規約委員会は、日本政府に対し、「人権の保障と人権の基準は世論調査によって決定されるものではないということを強調する」(1998年)と指摘し、「世論調査の結果にかかわらず、死刑の廃止を前向きに検討し、(中略)国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである」(2008年)と、世論をリードする形で死刑廃止への一歩を踏み出すよう明確に勧告しています。

近年では、志布志事件や足利事件、そして布川事件など、相次いで冤罪事件が明らかになり、代用監獄や捜査取調べ中の自白強要など、日本の刑事司法における人権侵害が多数報告されています。福岡事件や菊池事件、飯塚事件、さらに冤罪を主張しながら獄中死させられた帝銀事件や三崎事件など、死後再審の請求もいくつも申し立てられています。また、国連の人権機関からは、深刻な精神障がいを持った死刑囚の処刑など、国際的な人権基準に違反した処刑の危険性についても、繰り返し懸念が示されています。

まさに今、死刑制度を含む日本の刑事司法制度全体の抜本的な見直しが求められているのです。こうした観点から考えれば、死刑の執行に慎重を期するだけでなく、死刑の執行を正式に停止し、死刑制度に関する情報公開をさらに進めると共に死刑廃止についての公の議論を進めていくことこそ、人権擁護が任務である法務大臣としての職責を果たすことであると私たちは考えます。

近年、全世界で死刑を執行する国は、毎年20カ国前後にとどまっています。すでに世界の7割以上の国ぐにが死刑を廃止しており、死刑廃止の動きは、欧州諸国だけでなく、ラテンアメリカや中央アジア、アフリカ諸国にも浸透しています。東アジアにおいても、韓国が今年9月8日に死刑執行停止5000日を迎え、モンゴルでは2010年に死刑執行の停止を正式に宣言しています。中国をはじめ死刑を強固に支持する国々の中にも、死刑制度の運用を国際人権基準に沿ったものにしようとする肯定的な変化が見られます。

いま世界は、重大な犯罪に対し、罪を犯した人の更生に重点を置いた行刑制度や犯罪被害者支援の充実、あるいは貧困や差別問題に取り組む社会政策などによって対応しようとしています。人間の最も基本的な権利である生きる権利を奪う死刑という制度は、人権を保障すべき現代の刑事司法にあっては、存在してはならないものです。日本政府には、最大限の努力を払って、死刑に頼らない刑事司法制度を構築すべき国際的な義務があります。

2011年10月5日

死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
NPO法人監獄人権センター
 

新時代の刑事司法制度特別部会運営に関する意見書

2011年6月22日

法務大臣江田五月殿
法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会委員各位

取調べの可視化を求める市民団体連絡会
(呼びかけ団体)
アムネスティ・インターナショナル日本
NPO法人監獄人権センター
日本国民救援会
特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ

 私たちは取調べの可視化(全過程の録音・録画)の実現を求める市民団体によって組織された取調べの可視化を求める市民団体連絡会です。私たち市民団体は、刑事司法制度特別部会で議論されるに当たり、取調べの全過程の録音・録画の実現を強く求め、以下三点について要望致します。

1.取調べの全過程の録音・録画の法整備に向けた議論を討議の優先事項とすること
新たな捜査手法の導入等、取調べの可視化とは直接関係の無い論点に優先して、取調べの全過程の録音・録画の実現について討議してください。

2.冤罪被害者の意見を聴取すること
取調べの全過程の録音・録画の法整備に向けて討議する際には、冤罪被害を受けた多くの当事者の意見を聴取してください。

3.審議内容の情報公開を行うこと
市民に対して開かれた議論とするために、議事を公開し、発言者の氏名を明記した議事録の公表を強く要望致します。

以 上

呼びかけ団体連絡先
東京都千代田区神田錦町2-2 共同ビル4階
アムネスティ・インターナショナル日本
TEL 03-3518-6777

東京都千代田区神田小川町3-28-13-807菊田法律事務所気付
NPO法人監獄人権センター
TEL 03-5379-5055

東京都文京区湯島2-4-4 平和と労働センター5階
日本国民救援会
TEL 03-5842-5842

東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル3F
特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ
TEL 03-3835-2110 
 

賛同団体
国際人権活動日本委員会
社団法人自由人権協会(JCLU)
人権と報道・連絡会
菅家さんを支える会・栃木
富山(氷見)冤罪国賠を支える会
名張毒ぶどう酒事件全国ネットワーク
袴田巖さんの再審を求める会
布川事件・桜井さん、杉山さんを守る会
無実のゴビンダさんを支える会
無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会
 

私たち市民団体は、いまこそ取調べの可視化(全過程の録音・録画)を実現するよう日本政府に求めます。

「志布志事件」、「足利事件」、「氷見事件」、そして「厚労省元局長事件」をはじめ、ここ数年で明らかになった多くのえん罪事件は、長期間にわたる代用監獄での勾留と密室における取調べが、無実の人を虚偽の自白に追い込み、えん罪を生み出すという、日本の刑事司法の問題点を明らかにしました。

こうした刑事司法の問題点は、5 月24 日に、水戸地方裁判所土浦支部が再審無罪判決を言い渡した「布川事件」でも改めて浮き彫りになりました。裁判所は、この事件で強盗殺人罪により無期懲役刑に処せられた桜井昌司さん、杉山卓男さんの捜査段階における自白の信用性を否定し、その任意性も疑いを払拭できないなどして再審無罪の判決を言い渡しました。

警察、検察、裁判所など法の執行に携わるすべての関係者および関係機関は、こうした相次ぐえん罪・再審無罪事件について真摯に反省し、二度とえん罪を生みださないために、国際人権基準に沿って、再発防止に向けた具体的な刑事司法制度の改革を早急に行う必要があります。

特に、日本政府は、国連の人権諸機関が再三にわたって勧告している、取調べの全過程の録音・録画を早急に導入すべきです。取調べの全過程の録音・録画は、多くのえん罪被害者、そして、日本の大多数の市民が求めている喫緊の課題であると同時に、日本の刑事司法を国際人権基準に適ったものとするための全面的改革に向けた第一歩です。

この間、度重なるえん罪事件の発生による社会的批判を受け、法務省や警察庁その他捜査機関においても、可視化の必要性が検討されています。また、「厚生労働省元局長事件」を受けて法務大臣が設置した「検察の在り方検討会議」は、今年3 月31 日に提言書を公表し、特捜部及び特別刑事部において取調べの録画・録音を積極的に試行するとともに、知的障がいによりコミュニケーションに支障のある被疑者等に対する検察官の取調べについて、検察の運用により、録音・録画の試行を行うことを提言しています。この提言を受け、江田五月法務大臣は、検察庁特捜部及び特別刑事部の独自捜査事件で身体を拘束した事件について、全過程の録音・録画を含む、録音・録画の試行を指示しています。しかしながら、全過程の録画の試行が実施される事件は一握りにすぎないと考えられ、この間問題となってきたえん罪事件の再発防止策として十分なものとは到底いえません。

私たちは、江田法相による試行の決定を評価しつつも、取調べの全過程の録音・録画を基本とした立法作業を早急に進めることを政府に要請いたします。そして、この立法の一刻も早い実現のために与野党が十分に協力するよう、ここに強く呼びかけます。

2011年5月26日
取調べの可視化を求める市民団体連絡会

「取調べの可視化を求める市民団体連絡会」は、2011 年12 月2 日に開催された大集会「待ったなし!今こそ可視化の実現を」をきっかけに立ち上がった連絡会です。

呼びかけ団体
アムネスティ・インターナショナル日本
監獄人権センター
人権市民会議
日本国民救援会
ヒューマンライツ・ナウ


東北地方太平洋沖地震に関する声明

2011年3月12日

内閣総理大臣 菅 直人 殿
法務省矯正局長 三浦 守 殿
 

東京都千代田区神田小川町3-28-13-8F
菊田法律事務所気付
TEL/FAX:03-5379-5055

NPO法人監獄人権センター
代表理事 村井敏邦
事務局長 田鎖麻衣子
 

2011年3月11日14時46分東北地方太平洋沖地震が発生しました。被災された方々への同情と亡くなられた方々への深い哀悼の意を表します。

被災した刑事施設も多く、不安の中眠れぬ夜を過ごされたことと思います。監獄人権センターは、とりわけ被災地域にある拘禁施設の職員・被拘禁者のみなさまに深い同情の意を表します。

刑事施設においては、平素より水へのアクセスが著しく制約されています。私たちは、災害時における、必要な電気、水、食料等の必要最低限の資源の十分な確保について懸念しています。

今後、関係当局におかれましては、被災地域にある刑事施設における電気、水、食料等の確保について緊急にその正確な情報を確認し、必要な対策を為されるよう特段のご配慮をするよう強く要望いたします。
以 上

監獄人権センターで把握している東北地方太平洋沖地震被災地域の刑事施設の状況

*監獄人権センターで確認した情報(4月19日現在)。
報道によると、法務省は全国の63の刑事施設に収容されている受刑者等約2800人が、東日本大震災の発生後1カ月間に、計2156万円の義援金を被災地に送金したことを公表しました。

監獄人権センターには受刑者より、加古川刑務所において受刑者の要請を受けて、社会福祉法人中央共同募金会に限り受刑者が義援金を手数料不要の現金書留にて送ることができるようになったとの情報がありました。

*監獄人権センターで確認した情報(4月12日現在)。

被災地域の矯正施設の被災状況と対応状況について(参議院議員吉田忠智事務所提供)

(クリックするとPDFファイルでダウンロードができます)

*監獄人権センターで確認した情報(3月30日現在)。
・宮城刑務所では3月22日より手紙の発信ができるようになりました
・報道によると、いわき拘置支所、郡山拘置支所の被告らが3月12日、東京や栃木の施設に移送されました。郡山拘置支所については今月中にも戻す予定、いわき拘置支所については原発事故の推移を見て判断するとのことです。
詳しくはこちら をご覧ください(外部サイト)

*監獄人権センターで確認した情報(3月28日現在)。
宮城刑務所は3月17日より面会が再開しました。

*監獄人権センターで確認した情報(3月20日現在)。
福島刑務所は、福島第一原発から60km以上、福島刑務所いわき拘置支所は約43kmの距離にあります。現在、福島第一原発から半径20キロメートル以内の人は避難、20キロ~30キロの人は屋内退避となっていますが、両施設はこの範囲には入っていません。

*仙台の人権NPOワールドオープンハートさんからの提供情報(3月16日現在)
・3月17日より仙台拘置支所での面会が再開しました。
・宮城刑務所については面会再開は未定。

人権NPOワールドオープンハートさんのブログで最新情報を掲載しています

人権NPOワールドオープンハートさんのブログ


*以下は、地震発生後に国会議員が法務省より入手した情報等による(3月16日現在)。
1)建物の損壊等について
○宮城刑務所収容棟(RC構造・3階建)において1階から3階まで二本の亀裂が生じて、一部収容不能となっている。
○黒羽刑務所の外塀に数箇所亀裂が生じて要警戒となっている
○仙台矯正管区の庁舎が使用困難となり、国土交通省東北地方整備局において構造等の調査を実施している。なお、同管区機能は、現在、宮城刑務所に移転している。
2)電気について
在仙台の施設、福島刑務所、水戸刑務所において大きな支障が生じている状況であるが、停電に対しては自家発電等で対応しており、深刻な状況にはない。ただし、燃料切れ等が生じた場合、医療面においては、人工透析、人工呼吸器等が稼働せず、また、セキュティーシステム等も稼働しなくなり、施設の保安警備に支障が生じるおそれがある。
3)人的被害について
喜連川社会復帰促進センターの職員1名受刑者数名が擦過傷等軽症を負っただけで、職員・収容者とも大きな被害はない(職員の家族については、まだ多数所在確認ができていない)。
4)食料・飲料水について
土曜日から日曜日の深夜にかけて東京管内等から緊急輸送し、数日間は対応可能であるが、今週末くらいから次の対応を考えなければならない。
5)今後について
最大の問題は、被災地と計画停電が予定されている地域の自家発電するための燃料の枯渇で、医療設備等も多くあり、関係機関と折衝中。
 


NGO共同声明「市民が死刑判決に参加する社会に反対し、死刑廃止に向けた議論を求める」

呼びかけ団体:
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
NPO法人 監獄人権センター
 

私たちは、すべての人びとの人権を保障するという観点から、いかなる場合においても、国家が市民の名の下に死刑という判断を下してはならないと考えます。そして、死刑制度について十分な情報公開や議論もなされないまま、市民が直接関与して多数決で死刑を言い渡すことができる現在の裁判員制度が進んでいくことに対し、改めて強い懸念を表明します。そして、日本政府および国会に対し、ただちに死刑執行を正式に停止し、死刑廃止に向けた公的な議論を進めるよう要請します。

死刑は、生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的かつ尊厳を傷つける刑罰です。いまや、世界の7割の国ぐにが、この死刑という刑罰を拒否し、法律上あるいは事実上の廃止に踏み切っています。死刑は、暴力を制圧するために暴力を用いるという、憎しみと報復の文化を広げるだけです。そして、このような制度への協力を市民に求めることは、暴力の文化を社会のすみずみに広げることに他なりません。国家がなすべきことは、あらゆる人びとの人権を尊重しつつ、犯罪が起こりにくい社会を作ることであり、死刑という国家の殺人によって、悲しむ遺族を増やすことではないはずです。

日本の死刑制度は、依然として秘密主義のベールで隠されています。例えば、死刑確定者の日々の処遇状況や健康状態、死刑執行命令を出すに至る一連の手続き、さらに死刑執行に関わる刑務官や医務官にのしかかる精神的な負担など、死刑制度の現実は不透明なままです。裁判員に選ばれる市民に対して、死刑制度の問題性や残虐さなどを十分に認識した上で、量刑を適切に判断することができるような情報はほとんど提供されていません。

また、日本の刑事司法制度では冤罪事件が相次ぎ、捜査取調べ中の自白強要や捜査当局による証拠改ざん事件など、数多くの問題が明るみに出ています。国連などからも、再三にわたって日本の刑事司法が国際人権基準を満たしていないとして、強い懸念表明や改善勧告がなされています。死刑制度についても、戦後4件の再審無罪事件があり、無実を叫びながら死刑を執行された飯塚事件のように、死後再審の請求も申し立てられています。

私たちは、日本政府に対し、ただちに死刑執行を正式に停止するよう要請します。また同時に、人の命を奪うという重大な判断と責任を裁判員に負わせることで死刑制度を社会に広げるのではなく、今こそ立ち止まって、死刑制度の現実についてきちんとした情報公開を行い、死刑廃止に向けた公的な議論を進めるよう要請します。

2010年11月16日
【共同声明・賛同団体: 21団体】

国連・憲法問題研究会
ビデオプレス
死刑廃止国際条約の批准を求める四国フォーラム
ハンドインハンド岡山
出版労連 三一書房労働組合
死刑廃止を求める市民の声
日本基督教団東京復活教会
かたつむりの会
死刑廃止フォーラムinおおさか
林眞須美さんは無実! あおぞらの会
日本消費者連盟関西グループ
日本キリスト教婦人矯風会「法制度を考える会」
NPO法人青森ヒューマンライトリカバリー
憲法9条世界へ・未来へ秋田連絡会
日本キリスト教団 北松戸教会
全国「精神病」者集団
無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会
東京拘置所のそばで死刑について考える会(そばの会)
大道寺将司くんと社会をつなぐ交流誌 キタコブシ
「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク
永山子ども基金
 

大阪刑務所熱中症死亡事件に関する声明

2010 年 8 月 25 日
NPO法人監獄人権センター
代表  村井敏邦
事務局長  田鎖麻衣子
 

1 報道等によれば、本年7月17日、大阪刑務所において、保護室に収容中であった60代の男性受刑者が死亡した。死因は熱中症とみられている。男性は、大声を出すなどしたために15日午後、保護室に収容された、とされている。17日は朝から水分を摂らず、また昼食もとらず、午後4時ごろ、刑務官が巡回した際、うつぶせで倒れているのに気付いたが、刑務官の呼び掛けに反応せず、既に意識がなかったという。なお刑務所側は、保護室内にはエアコンが設置されており、室温は24~26度に設定され、男性は水分もとっており、健康診断でも問題はなかった旨、発表しているもようである。さらに、8月4日には、高知刑務所において40歳代の女性受刑者が熱中症の疑いで死亡した。この受刑者が保護室に収容された事実があったか否かは定かでないが、同月1日に熱中症でいったん緊急搬送された経緯があったという。いずれにしても緊急搬送後は刑務所に戻されている事実に照らせば、その後の医療措置が適切になされていれば死亡に至ることはなかったと考えられる。これらの悲惨な事案から指摘できるのは、保護室収容自体の問題点、および、刑事施設全般に関わる非人道的な保健衛生・医療体制の不備である。

2 保護室は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第79に規定され、被収容者に自傷・他害のおそれがある場合や、刑務官の制止に従わず大声・騒音を発するとき、施設の設備等を損壊・お損するおそれがあるときに、刑事施設の長の命令により収容することができる、特殊な構造の施設である。すなわち、自殺等を防止するという観点から、窓は採光用のガラスブロックがあるのみで密閉された空間となっており、あらゆる突起物がなく、トイレも洗面台も床に埋め込まれ、注水や排水の操作を被収容者自らが室内で行うことはできない。摂取できる水分は、食事の際に提供される水・麦茶等、そしてペットボトルに入れられた水に限られる。もちろんペットボトルの水がなくなっても、被収容者が自由に補充することはできない。こうした保護室の有する危険な性格から、法は、収容に際しては、刑事施設の職員である医師の意見を聴くように定めているが、直接の診察が要件とされていないため、職員からの電話による問い合わせを受けて、医師が保護室収容に差し支えなしとの意見を述べているのが実態である。

今回の事案では、男性受刑者が意識を失い倒れる以前に、少なくとも大声を発する状態ではなくなっていたと考えられ、その時点で直ちに保護室収容が解除されなければならなかった。意識を失った状態に至るまで収容を継続していたこと自体が、違法である。また、死亡した17日は日曜日であったことからも、漫然と収容を継続していたのではないかとの疑念を払しょくしえない。さらに、保護室収容に際して、医師がどのような資料に基づき、いかなる意見を述べたのかは全く明らかにされていないが、収容開始時から収容中に至るまで、医師が受刑者を直接診察した事実はないと推察される。

保護室(保護房)における熱中症での死亡事故は過去にも繰り返し生じている。1996年7月25日には松江刑務所浜田拘置支所において44歳の男性受刑者が熱中症により死亡(遺族が国家賠償請求訴訟を提起し、国の敗訴が確定)した。また本件と同じ大阪刑務所では、1995年8月に当時61歳の男性受刑者が熱中症で死亡しているほか、報道によれば、3年前にも熱中症による死亡事案が発生しているとのことである。これらの二事案が保護室(房)収容を機としたものか否かは明らかでないが、いずれにしろ、刑事施設における被収容者の身体の安全管理が、極めて軽視されてきた結果の惨事であることは間違いない。

3 また、刑事施設においては、冷暖房設備が設置されている場合であっても、冬季の北海道など例外的な場合を除き、被収容者の生活空間で設備が稼働されることはない。また、水の使用は保護室内に限らず極めて厳しく制限され、許可された範囲外の使用は懲罰の対象とされる。その理由はコストの抑制にある。冷房がなく、水も自由に摂取できない状況では、熱中症に至るのは当然である。逆に冬季には、寒冷地域ではなくとも凍傷となる事例が報告され、凍死が疑われる事案も発生している。

4 監獄人権センターでは、名古屋刑務所事件に端を発した受刑者処遇法制定作業の過程より、医師による意見の聴取は必ず診察を経たものでなければならないこと、また、保護室収容期間は無制限に更新が可能とされているが、これに上限を求めること、そして、保健衛生・医療体制の抜本的改革のため、刑事施設医療を厚生労働省のもとに移管すること等を求めていたが、これらが実現されることはなかった。

刑事施設において、被収容者の生命・身体の安全よりも、規律・秩序の維持とランニングコストの抑制を重視するという誤った姿勢が抜本的に改められない以上、同様の悲劇は不可避であるといってよい。再発防止のためには、刑事施設における保健衛生・医療をすべて法務省管轄から切り離し、厚生労働省の管轄下におき、社会一般における保健衛生・医療と同様の水準を確保することが必要である。

よって監獄人権センターは、法制定から5年目となる見直し時期を来年に控えた今、直ちに次の作業がなされることを求める。

(1)居室内の気温設定をはじめとする居住環境の整備、スポーツドリンクを適時適切に供給するなど、熱中症対策を徹底すること。
(2)2003年以降の死亡帳を精査し、刑事施設内における不審死事案、とりわけ保護室収容関連案件について徹底して調査すること。その際、必要があれば2003年以前の事案についても積極的に調査を行うこと。
(3)保護室収容の運用を直ちに改め、医師による事前および収容中の診察を義務的とすること。
(4)保護室収容につき定めた法第79条をはじめ、行刑改革顧問会議の活用等により、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律の全面的な見直し作業を行うこと。
(5)上記と並行し、保健衛生・医療を厚生労働省下に移管するための検討・準備作業を開始すること。


千葉景子法務大臣による死刑執行に抗議する

2010 年 7 月 28 日
NPO法人監獄人権センター
事務局長  田鎖麻衣子
 

菅内閣の千葉景子法相は本日(7月28日)、篠沢一男さん(東京拘置所)、尾形英紀さん(東京拘置所)の2人に対し、死刑を執行した。今回の執行は千葉法相が2009年9月に就任して以来、初めての死刑執行である。

千葉法相は就任以来一貫して、死刑執行については命の問題であるので慎重に判断をする旨発言し、2010年7月に行われた参議院選挙落選後も民間人閣僚として「死刑は大変重い刑であり、これまでも慎重に対応されてきた」と発言していた。千葉法相は、大臣就任以前は「死刑廃止を推進する議員連盟」のメンバーであり、また、2009年7月28日以来、昨日まで1年間にわたり死刑施行を行わなかった点において、国際的にも高い評価を受けていた。しかし、最後の執行からちょうど1年という節目に、死刑廃止に向かう国際的潮流に抗うかのように、死刑は執行された。この死刑執行に対し、監獄人権センターは怒りと悲しみをもって、強く抗議するものである。

千葉法務大臣は、周囲の期待にも、また自らの表明していた意向にも反して、死刑制度の問題については就任以来、国民的議論をする機会を作ることも、政府・国会での議論を喚起することもなかった。本日、千葉大臣は、自ら死刑執行に立ち会ったことを明らかにしたうえで、今後は刑場を公開し、また、死刑執行に関する勉強会を設置する旨を表明したという。しかし、様々な欠陥を抱え国内外からの批判に耐え得ない状況に至っている死刑制度の現状を踏まえれば、幅広い議論の喚起や、その前提となる情報の公開という作業は、とうに開始されなければならなかった課題である。敢えて、尊い2名の人命を犠牲としたうえで開始されるべきものではなかった。

とりわけ、尾形英紀さんは一審で死刑判決が出された後、控訴を自ら取り下げていた。これは、上訴を尽くさず取り下げている人が死刑執行の対象になりやすいという近年の傾向を反映したものである。2008年10月、国際人権(自由権)規約委員会より「上訴権を行使しないまま、死刑の宣告を受ける被告人の数が増加していること」に懸念が表明されているが、再審査を経ないで死刑判決が確定することは、冤罪による死刑執行の可能性を高めるものである。

また同委員会は「政府は、世論調査の結果に拘わらず死刑廃止を前向きに検討し、必要に応じて国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである。」とも勧告した。政治家は、人権問題に関しては、世論に迎合するのではなく、ましてや既存の制度をかたくなに維持しようとする官僚機構に屈服するのでもなく、必要な情報を公開・提供し、社会の議論を喚起し、自ら世論をリードする責務がある。

今後、誰が法務大臣の任に就くことになろうと、その職務遂行に必要なものは、最も基本的な人権である生命権の保障を確実にするため、因習にとらわれない強い信念とリーダーシップである。そのためにも、これから設置されるという死刑制度に関する勉強会には、これまで死刑制度を真摯に問い続けこれに反対してきた市民団体からも、複数の代表の参加が確保されるべきである。監獄人権センターは、死刑執行の停止、そして死刑制度廃止の政策的実現に向け、今後も取り組んでいく決意である。


NGO共同声明 : 取調べの全面可視化を求める共同声明

私たちは、法務省が6月18日に発表した「取調べの可視化に関する省内勉強会の中間取りまとめ」において、可視化に関する議論が後退していることに懸念を表明します。

民主党は、2009年総選挙に際して発表したマニフェスト2009において、「消費者・人権」と題する項目を設け、同項目の中で「取り調べの可視化で冤罪を防止する」と明記しました。千葉景子法務大臣も、このマニフェストに沿って取調べの全面可視化を進めていくことを表明し、法務省内に勉強会とワーキング・グループを設置し、可視化に向けた検討を進めてきました。

しかし、2010年の通常国会では取調べ可視化法案の提出は見送られ、2010年6月に発表された民主党のマニフェスト2010から「人権」の項目が消え、取調べの可視化に関する記述もなくなっています。

さらに、法務省が今回発表した「取調べの可視化に関する省内勉強会の中間取りまとめ」では、「被疑者取調べの全面的な可視化の実現を基本」として検討を進めているとしつつも、全事件の可視化は現実的ではないとし、さらに取調べの全過程の可視化が捜査に悪影響を与えるとの懸念を示しています。一方、新たな捜査方法の導入についても検討したいとして、2011年6月以降に検討結果を取りまとめるという方針を示しています。

現在の刑事司法制度では、代用監獄である警察留置場に身柄を確保した上で、弁護人の立会いがないままの長期間にわたる取調べが常態化しています。その結果、自白の強要による冤罪事件など、深刻な人権侵害が相次いで起こっています。国際人権基準に沿った適正な捜査・取調べを実現し、人権侵害を防止するためには、代用監獄の廃止や取調べ時間の制限等による規制とともに、取調べそのものを監視する体制が必要であり、取調べの全面可視化は必要不可欠です。後に無罪判決を受けた元死刑囚や2010年3月に再審無罪となった菅家利和さんをはじめ、様々な冤罪事件の被害者の多くが、自白を強要されるに至った自らの体験を語る中で、取調べの可視化を訴えています。

取調べの可視化を進めている諸外国では、違法な取調べを抑制し、虚偽の自白を防止するだけでなく、信用性の高い証拠が作成され、裁判における正確な事実認定に寄与する効果が見られたとの報告があります。また、国連の拷問禁止委員会や自由権規約委員会では、繰り返し日本の刑事司法が国際人権基準に明らかに違反していることが指摘され、取調べ段階での全過程の録画・録音および弁護人の立会いを導入すべきであるとする勧告が出されています。

そもそも、法務省の勉強会およびワーキング・グループは、閣僚関係者以外はメンバーが明らかでなく、その議事録なども公開されていません。また、同省の調査計画では、国内の捜査経験者からのヒアリングを行うとする一方で、冤罪被害者など実際に取調べの中で人権侵害を受けた人びとの声を聞く調査が含まれていません。

日本政府および主要な政権党たる民主党は、取調べの可視化の議論において、現在の刑事司法制度が多くの冤罪被害者を生み出している事実を踏まえ、被疑者の権利保障を国際人権基準に合致させることを第一の目的とすべきです。そして、刑事司法の透明化を実現するために、新たな捜査手法の導入等の議論とは無関係に、まず取調べの全面可視化に踏み切ることが早急に求められています。

私たちは、日本政府に対し、取調べの全面可視化を含む、刑事司法制度の抜本的改革のために以下の点を要請いたします。

・法務省の勉強会およびワーキング・グループに関して、そのメンバーおよび議事録を明らかにし、検討過程を公開すること
・今後の調査、検討においては、取調べでの自白強要など、取調べ過程での人権侵害が指摘されている冤罪事件の被害者や弁護士からもヒアリングを行うこと
・新たな捜査手法の導入等の議論と切り離し、遅くとも2011年の通常国会において、取調べの全面可視化法案の成立を図ること
・取調べの全面可視化だけでなく、取調べにおける弁護人の立ち合いの実現と、代用監獄制度の廃止に向けた検討作業を開始すること

 

2010年7月1日

<呼びかけ団体>
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
NPO法人監獄人権センター

<賛同団体> ※2010年7月1日現在 36団体

NPO法人青森ヒューマンライトリカバリー
アジア女性資料センター
アジアの浅瀬と干潟を守る会
アムネステイなごや御器所140G 
アースチャイルド
アニム・プロジェクト
一羊会
えん罪 JR浦和電車区事件被告団(美世志会)
えん罪・JR浦和電車区事件を支援する会
釜ヶ崎医療連絡会議
樹花舎
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
憲法を守る市民の会
「婚外子」差別に謝罪と賠償を求める裁判を支援する会
死刑廃止国際条約の批准を求める四国フォーラム
「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク
人権市民会議
人権と報道・連絡会
JR東労組中央本部
生存ユニオン広島
全国一般東京ゼネラルユニオン
全国「精神病」者集団
戦争を許さない女たちのJR連絡会
全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)
盗聴法に反対する市民連絡会
大道寺将司くんと社会をつなぐ交流誌 キタコブシ
富山(氷見)冤罪国賠を支える会
日本国民救援会中央本部
袴田巌さんを救う会
反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)
ハンドインハンド岡山
ビデオプレス
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
平和憲法を守る荒川の会
無実のゴビンダさんを支える会
無実の守大助さんを支援する首都圏の会
【団体名50音順】
 


中国政府による再度の日本人死刑執行に対する抗議声明

2010 年 4 月 9 日
東京都千代田区神田小川町3-28-13-8F
菊田法律事務所気付
TEL / FAX 03-3259-1558
 

NPO法人監獄人権センター
代  表  村井敏邦
事務局長  田鎖麻衣子
 

4月9日、中国政府は日本国籍者である武田輝夫死刑囚(67)、鵜飼博徳死刑囚(48)、森勝男死刑囚(67)の3名に対して死刑を執行した。3名はいずれも、覚せい剤を密輸しようとした罪により死刑判決が確定していた。4月6日に執行された赤野光信死刑囚(65)に続き、4名の命が奪われたことになる。

生命に対する権利は、すべての人に保障された基本的人権であって、刑罰として生命を奪う死刑は、いつ、いかなる政府によっても、用いられてはならない。

まして、薬物犯罪は、国際人権(自由権)規約第6条第2項が規定する「最も重大な犯罪」にすら該当しないものであり、かつ、中国政府自身が、国連機関をはじめとする国際社会から、死刑を適用しないよう繰り返し求められてきたものである。批判に真摯に耳を傾けることなく、処刑をもってこれに応えた中国政府の態度は、強い非難をまぬかれない。しかも、中国政府は、上記4名以外にとどまらず、日々、多くの市民を処刑し続けているのであって、この点をも見過ごすことはできない。

我々はまた、日本人死刑囚の執行を阻止するための具体的行動をなんらとらなかった日本政府に対しても、強く抗議する。日本政府は、中国政府による国際人権法に反した日本国民の死刑執行という事態に直面した今こそ、自ら存置する死刑制度が抱える数多くの問題点を率直に受け止め、死刑廃止に向けた一歩を踏み出すべきである。

監獄人権センターは、今後も国内外の死刑廃止を実現するための取り組みを強めていくものである。


中国政府による日本人死刑執行に対する抗議声明

2010 年 4 月 6 日
東京都千代田区神田小川町3-28-13-8F
菊田法律事務所気付
TEL / FAX 03-3259-1558
NPO法人監獄人権センター
代  表  村井敏邦
事務局長  田鎖麻衣子
 

4月6日、中国政府は日本国籍者である赤野光信死刑囚(麻薬密輸罪により死刑確定)の死刑を執行した。

生命に対する権利は、根本的かつ神聖であり、また国境を越える価値であって、生命は、国家をはじめ、いかなるものによっても奪われてはならない。また、薬物関連犯罪が国際人権(自由権)規約第6条第2項の「最も重大な犯罪」にあたると解釈される余地がないことは明らかである。

さらに、赤野死刑囚は取調べにおいて的確な通訳を受けず、事件において従属的な役割しか果たしていないとの主張はまったく受け入れられなかったと伝えられている。これは同規約第14条により保障された公正な裁判を受ける権利の明白な侵害である。 監獄人権センターは、中国政府による、この計画的な殺人行為を強く非難する。同時に、自国民に対する切迫した死刑執行に対し、しかも直前に副総理が訪中していたにもかかわらず、断固とした態度をとらなかった日本政府をも非難するものである。

中国はすでに、さらに3名の日本人死刑囚の執行を予定している旨、通告している。

監獄人権センターは、予定された死刑執行に対して明確に反対する。そして今後も世界の死刑廃止運動に積極的に取り組んでいくものである。


English statement(PDF)


中国政府による日本人死刑執行通告に対する抗議声明

2010年4月4日
東京都千代田区神田小川町3-28-13-8F
菊田法律事務所気付
TEL / FAX 03-3259-1558
NPO法人監獄人権センター
代  表  村井敏邦
事務局長  田鎖麻衣子
 

中国政府は、麻薬密輸罪で死刑が確定した4名の日本国籍者の死刑を執行する旨、日本政府に伝えた。赤野光信死刑囚(65)の処刑予定日は4月5日、武田輝夫死刑囚(67)、鵜飼博徳死刑囚(48)、森勝男死刑囚(67)ら3名の処刑予定日は4月8日とされている。

岡田克也外務大臣は、死刑執行が世論に与える影響について懸念を表明したが、日本政府として処刑を中止する具体的な要請は行っていない。

たとえ死刑存置国においてであっても、死刑は国際人権(自由権)規約第6条第2項にしたがい、最も重大な犯罪に限定されねばならない。そして、同規約委員会がスリランカ(1995年)、クウェート(2000年)、タイ(2005年)に対する総括所見において示しているとおり、薬物関連犯罪への死刑の適用は、同規約の求める最低基準を充足するものではない。

われわれは、中国政府による野蛮な殺害行為はもとより、みずからもまた死刑制度を存置し、これを必要とみなす日本政府が、内政干渉にあたるとの理由から、自国民を保護するための行動をとらないことをも非難するものである。監獄人権センターは、いかなる政府によるものであっても、またいかなる犯罪に対して科されるものであっても、死刑に強く反対する。そして死刑に反対する諸個人・諸団体と連帯し、全世界における死刑廃止のための取り組みを強めていくものである。


English statement(PDF)


森英介法相による3 度目の死刑執行に抗議する

2009年7月28日 監獄人権センター

麻生内閣の森英介法相は本日(7月28日)、山地悠紀夫さん(大阪拘置所)、 前上博さん(大阪拘置所)、陳徳通さん(東京拘置所)の3人に対して死刑を執行した。 私たち監獄人権センターは、本日の死刑執行に強く抗議する。


今回の死刑執行は森英介法相による3度目の執行である。 すでに衆議院が解散され、8月30日の総選挙後に総辞職が予定されている内閣の法相が、 しかも、政権交代さえとりざたされているこの時期にあえて執行に踏み切ったことは、 政治的にも無責任で許し難い暴挙である。

2007年12月の鳩山邦夫法相(当時)による執行以来、 ほぼ2~3 カ月に1 度のペースで行われてきた死刑執行を、森英介法相は今年1月29日の4名の死刑執行以降、 半年近くにわたって行って来なかった。 その背景には、昨年10月28日に森法相が飯塚事件の久間三千年さんに対して行った死刑執行が,無実の人に対する執行であった疑いが、 足利事件の菅家利和さんの再審開始によって一段と高まったという事情があったと思われる。

足利事件とほぼ同時期の飯塚事件において、久間三千年さんの有罪認定の決め手となった DNA鑑定は足利事件と同じ「MCT118」式の検査法で、 しかも、久間三千年さんのDNA 型は菅家利和さんのDNA型と同じ「16-26型」とされていた。 菅家さんに対するこのDNA 鑑定が誤りであったことが明らかになった今、久間さんの冤罪の可能性は一段と高まったと言わねばならない。

久間さんは一貫して無罪を主張し、死刑執行の直前まで弁護団を通じて再審を準備していた。 また、森法相が久間さんの死刑を執行した昨年10月28日までには、東京高裁が足利事件のDNA 再鑑定に踏み切る可能性がすでに高まっていた。 森英介法相はこれらの事情を精査しないまま、あるいは知りながら、あえて久間三千年さんの死刑を執行することによって、 決してあってはならない「冤罪執行」に手を染めた可能性が高いのである。

足利事件の無実が誰の目にも明らかになったこの春以降、 森英介法相も自ら犯した「冤罪執行」の可能性を意識し、死刑執行を躊躇してきたに違いない。 ならば、なぜ今、新たな死刑執行に踏み切ったのか。森英介法相はこの点について、説明責任を果たすべきである。

さらに、今回執行された山地悠紀夫さんと前上博さんは、ともに控訴を取り下げ、一審判決限りで死刑が確定した。 しかも、ともに確定して2 年余りでの執行であり、陳徳通さんも確定後3 年余りしかたっていない。 この間、死刑執行のペースを上げるために、今回と同様上訴を取り下げて自ら判決を確定させた死刑確定者を狙って早期に執行するケースが目立つ。 しかし、これは昨年10 月に行われた国際人権(自由権)規約委員会の「死刑事件における必要的上訴制度」の勧告にも反し、 それこそ「冤罪執行」の危険性を高めるものである。

今年に入ってからも、東アフリカのブルンジやアメリカのニューメキシコ州が死刑を廃止するなど、 世界は「死刑のない世界」に向かって着実に前進している。日本でも裁判員制度が実施され、 市民が死刑か否かの判断に直面することが現実のものとなり、死刑制度に対する関心もかつてなく高まっている。

このような状況の中で、民主党もその政策集「index2009」の中で、 「死刑存廃の国民的議論を行う」「当面の執行停止や死刑の告知、執行方法なども含めて国会内外で幅広く議論を継続してい」 くと明記するなど、死刑存廃問題に具体的に言及する政党も増えてきた。 「冤罪執行」の危険や必要的上訴制度の問題を含めて今回の執行が突き付けている問題点を、 政府、各政党、各議員そして私たち市民は真剣に議論し、「死刑のない社会」に向かって今こそ舵を切るべきである。


広島少年院の教官による被収容者少年に対する暴行・虐待事件に関する声明

2009年6月16日  NPO法人監獄人権センター
代表 村井敏邦   副代表 菊田幸一
副代表 海渡雄一   事務局長 田鎖麻衣子

6月9日、広島少年院(収容定員102名)の4名の教官が、 被収容者少年に対する暴行・虐待を行ったとして逮捕された。 5月22日付けで広島矯正管区が発表した中間報告および報道等によれば、 暴行・虐待の内容は、少年の顔や身体を平手・手拳で殴打する、足で少年の身体を蹴る、 トイレに行かせずに失禁させる、シャワーの水を浴びせおむつの着用を強要する、 「死ね」と言いながら首を絞めるなど、苛烈を極めている。中間報告時点において確認された事案だけで約100件、 被害者は約50名にものぼり、暴行・虐待を行っていた教官は逮捕された4名にとどまらないという。 これほど深刻な人権侵害が相当期間にわたって大規模に繰り返されていた事実から、 もはや本件が特定の教官らだけに帰責できる問題ではないことは明らかであろう。

本件によって、まず思い起こされるのは、2002年に発覚した名古屋刑務所事件である。 2名の死亡者まで出したこの忌まわしい事件を機に、行刑改革会議が発足し、 監獄法改正(受刑者処遇法およびその改正法である刑事被収容者処遇法の成立)へとつながった。 成人施設における処遇も今なお多くの改善を要する状態にあることは間違いないが、新たな立法により、 被収容者の人権尊重と改善更生の理念が明確化され、刑事施設視察委員会の設置や、不服申立て制度の新設などがなされた。 ところが、こうして成人矯正分野での改革が進む一方で、少年矯正に関しては何ら手が触れられないまま経過していた。 もとより、少年院は、少年の健全育成という少年法の理念のもと、少年に矯正教育を授ける施設であって、 成人を収容する刑事施設とは本来的に異なる性格の施設と考えられてきた。 実際に、少年の立ち直りのために心血を注いできた多くの教官たちによる、 心を打つまでの努力の積み重ねがあり、今日の少年矯正を支えていることは事実である。 その一方で、人の自由を奪う拘禁施設は、一般的に被収容者の人権が傷つけられやすい環境であることは否めず、 人権侵害に対するセーフガードが必要である。 まして、少年は成人と比較し、自己が受けた人権侵害や不利益について外部の第三者等に訴える能力に乏しいため、 問題処遇が生じた場合であっても外部には明らかになりにくい。ゆえに、少年を収容する施設においては、 外部の独立した視察機関や、実効性ある不服申立て制度の整備の必要性が成人以上に高いといえる。

本件を受けて現在、法務省では少年院法の改正を検討中であるというが、 今一度、1998 年(第1回)および 2004 年(第2回)に、 国連・子どもの権利委員会が日本政府報告書審査にあたり採択した最終所見の内容を想起し、 検討に入るべきである。特に、第1回審査時の所見においては、条約「第 37 条、第 40 条及び第 39条、及びその他の関連する基準、 例えば、北京ルールズ、リヤド・ガイドライン、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則との適合性」が懸念事項とされ、 「独立した監視及び適切な不服申立手続が不十分であるこ」が特に懸念される項目として挙げられ、 これを受けて「監視及び不服申立手続、代用監獄における状況に特に注意が払われるべきである」と勧告している。 第2回審査時においても、上記諸基準の「完全な実施の確保」として、同内容が引き続き勧告されている。

現在でも毎日のように、広島少年院における不祥事の続報がなされており、問題は深刻さを増すばかりである。 施設外の独立した第三者からなる視察委員会制度、施設外に対する不服申し立て制度とそれに対する第三者による諮問機関の設置をはじめ、 少年院・少年鑑別所と成人矯正施設における人事交流のあり方の見直しなどを含めて、 少年法の理念および子どもの権利条約を始めとした国際人権規準に立ち返った処遇を実現するために必要な改革が、 真摯に行われることを強く望む。


森英介法相による2 度目の死刑執行に抗議する声明

2009年1月29日 監獄人権センター

麻生内閣と森英介法相は本日(1 月29 日)、牧野正さん(福岡拘置所)、 川村幸也さん(名古屋拘置所)、佐藤哲也さん(名古屋拘置所)、西本正二郎さん(東京拘置所) の4 人に対して死刑執行に行った。私たち監獄人権センターは、本日の死刑執行に強く抗議する。

今回の死刑執行は森英介法相による2 度目の執行であり、前回10 月28 日の執行から 3 か月しかたっていない。一昨年12 月の鳩山邦夫・前々法相による執行以来、 日本政府はほぼ2 か月に1 度のペースで死刑執行を行ってきた。今回の執行は、 日本政府が今後も昨年同様のペースで死刑執行を行う態度を示したものと受け止めざるをえない。

国連総会は昨年12 月18 日、死刑執行の一時停止などを求める決議を、賛成106 か国、 反対46 か国、棄権34 か国と一昨年を上回る賛成多数で2 年連続で採択した。 国連総会決議から1 か月もたたずして行われた今回の執行は、 決議に示された国際社会の死刑廃止に向けた強い意思に対する挑戦である。

今回執行された4 人うち、牧野正さんと西本正二郎さんは、 いずれも控訴を自ら取り下げ、一審限りで死刑判決が確定しており、 牧野正さんについては公判段階から精神障害の存在が争われていた。 昨年10 月の国際人権自由権規約委員会の日本政府報告に対する最終見解では、 「高齢者に対する死刑執行や精神疾患を持つ人の死刑執行については、 より人道的なアプローチがとられるべきである」「死刑事件に関しては必要的上訴手続きを設けるとともに、 再審請求や恩赦の出願がなされている場合には執行停止の措置をとるべきである」と明確に勧告されている。 今回の執行は、こうした勧告を無視した暴挙である。

近年、自ら上訴を取り下げる死刑囚が目立つが、それ自体不自然なことであり、 死刑判決を受けた被告が上訴すること自体をバッシングするマスコミや日本社会の雰囲気が、 そうさせている面が否定できない。前々回執行の山本峰照さん(控訴取下げ)、 前回執行の高塩正裕さん(上告取下げ)に続いて、今回も上訴を経ていない死刑確定者の執行を安易に行ったことは、 日本が批准している国際人権自由権規約の精神にも反するものである。

すでに国連加盟国の7割にあたる138 か国が法律上・事実上死刑を廃止し、 死刑存置国は59 か国にすぎない。残る主要な死刑存置国である中国、アメリカも死刑執行を減らしている。 アメリカも死刑執行はピーク時(1999 年)の2 分の1 に減っており、死刑判決もピーク時(1994 年) の3 分の1 に減っている。アメリカの昨年の死刑執行数は37 人にとどまっている。そうした中で、 日本だけが一昨年は9人、昨年は15 人と死刑執行を急増させていることは異様と言うほかはない。 中国やアメリカと比しても、日本の犯罪状況が悪化している事実は一つもない。 殺人の認知件数は昨年やや上昇したものの、犯罪による死亡者数とともに40 年以上一貫して減少傾向が続いている。 日本だけが死刑なしでやれない理由など一つもないのである。

昨年秋以降、アメリカ発の世界経済危機が深刻化し、 日本国内でも非正規雇用者を中心に失業問題が深刻化している。 こうした中で、労働市場の規制緩和や福祉切り捨てなど市場原理主義による過去の政策の見直しを迫る声が日増しに高まっている。 今こそ、自己責任を強調する市場原理主義と手をたずさえて進展してきた厳罰化政策も、真剣に見直すべき時機である。

「未曾有の経済危機」に何らの対応もせずに問題を先送りしてきた政権が、 死刑執行だけはこれまで通り続けるということは、許されるものではない。 麻生内閣と森英介法相は死刑執行を直ちに停止し、 死刑廃止議連など各界各層とともに死刑制度の廃止に向けた議論を開始すべきである。

 
 

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